温熱環境リフォーム 設計・施工について

(7) 温熱環境リフォームの実例

 

1) 水回りを中心とした事例/実証実験 (ガイドブック43〜44ページ)

〇実験ケースⅠ:在来工法の既存浴室に暖房設備設置のみを行う対策です。躯体の性能は55年省エネ基準相当です。暖房設備は浴室暖房乾燥機 (2.4KW/200V) です。このケースでは、作用温度は18℃以上確保しているのですが、床付近が冷たく表面温度が一定ではないため、不快に感じる状態であることが分かりました。
〇実験ケースⅡ:生活空間における断熱区画の形成、断熱及び浴室改修による対策です。断熱リフォームは、部位ごとに平成28年省エネ基準相当を目標に、外皮に断熱・気密改修を実施、加えて浴室ユニット (断熱タイプ) 交換を行いました。暖房設備は、浴室暖房乾燥機 (2.2KW/200V) です。このケースでは短時間に均一で十分な温度になり、良好な温熱環境を実現できることが分かりました。

2) 生活範囲を区画した事例 (ガイドブック45〜46ページ、13ページ)

【子供が独立した夫婦世帯において、1階に生活空間を集約した実例】
 リフォーム当時、築34年の在来木造住宅でした。掃き出しの窓が大きく、縁側付きの和室は、冬の昼間は日当たりが良いが、夜間は窓からの冷気を感じていたとのことでした。また耐震性能をあげることが大きなテーマになっていました。
 そこでダイナミックに1階部分をほとんどスケルトンの状態にして、木材の腐朽箇所や劣化、金物の使用状況等の詳細調査を実施しました。
 断熱施工については、2階は生活空間から除外して、生活空間を集約した1階部分の温熱環境を改善しました。同時に耐震改修とバリアフリー化、水回りと設備の改修を実施し、費用として1000万円ほどかかっていますが、住環境としては従前と比べものにならないほど快適な家になりました。

(8) リフォーム実施後の注意点

 

1) 事後の温熱環境の確認と暮らしの中での注意点 (ガイドブック47〜48ページ)

 リフォーム実施後は、居住者の方と、温度がどのように変化するのか、お話しながら暮らし方のアドバイスをしていただきたいと思います。
 その際、ここで紹介している機器を用いて温度を実測することによって、改修効果を確認することが非常に重要です。
 石油ストーブのような室内に開放された状態で燃焼する器具をそのまま使い続けているケースがよくありますが、改修後は気密性が高まっていますので、ガスの問題や結露につながってしまいます。室内に開放された状態で燃焼しない器具、もしくは、気流式 (エアコン) や輻射式 (パネルヒーターなど) の機器を提案し、開放型の暖房器具は使用しないことを強く伝えていただきたいです。
 水回りの暖房器具は、使用する前にタイマー機能などを活用して、早めの稼働で良好な温熱環境を形成することが重要です。ただし、求める室温への到達時間は、対策後の断熱性能や身体的な理由などで変わるため、検討段階での要望確認が必須です。
 リフォームにより、気密性が高まった住宅では、結露の発生や空気質の悪化を防ぐために、居室や水回りで設置した換気設備の定期的なメンテナンスの必要性も伝えなければならない大切なことです。


以上