温熱環境リフォーム 設計・施工について

(4) 計画フローと計画条件の把握

 

1) 温熱環境リフォームの流れ (ガイドブック17〜18ページ)

 温熱環境リフォームは、大きく8つの流れで構成されていますが、⑤と⑥がガイドブックの中心的な解説内容になっています。重要なことは「③建築診断の実施」です。その結果を受けて、目標設定や、リフォームの設計を行います。リフォーム後の暮らし方について、少し勘違いをしてしまうとせっかくやった対策が活かされないため、「⑦リフォーム後の暮らし方アドバイス」も重要になると思います。

2) ヒアリングのポイント (ガイドブック19ページ、49〜51ページ)

 最初の①と②の流れの中にヒアリングがありますが、これも重要なポイントとなります。一般修繕との組合わせで温熱環境を改善する対策が提案できるかを探し出したり、足元の冷たさや窓の結露等、どの部位の断熱性能を向上することで対策できるかを見つけ出したり、暖房室の性能向上か、それとも非暖房室も含めた生活範囲全体の性能向上が必要かを確認するなど、ヒアリングにおいて設計の基本的部分を押さえます。
ガイドブック巻末にはヒアリングシートを用意していますので、これを使いながらお客様とお話をしていただければと考えています。

3) 建物診断の方法 (ガイドブック20〜22ページ)

 基本は目視による診断になります。床下や小屋裏に入って状況を確認していただきますが、その際に断熱材の有無の確認と劣化の診断を一緒に行うことが重要になります。改修後に断熱材を入れたことによってかえって不具合になってしまうことを防ぐために、劣化診断を十分に実施していただきたいです。
 また、建物の基本情報を得るために設計図書や建設年代から性能を推定することもできます。これは在来工法のデータになりますが、建設年代を想定することができますので、何も手掛かりがない場合はそういった方法で断熱性能をおさえることもできます。
 次に温度の実測調査を行うことも重要です。放射線温度計や赤外線サーモグラフィを使って、居住者と共に実際の温度を測定し確認することで、住まい手に分かりやすく伝わります。一番手軽に把握できる方法は、放射温度計で室内の表面温度を記録していくことです。最近はスマートフォンにサーモグラフィのアタッチメントをつけてスマートフォンの画面上にグラフィックな温度状況を記録することもできるようになってきています。赤外線サーモグラフィの使い方は、非常にシンプルな使い方がよく、測定個所の表面温度の分布から断熱材の有無を判断することや、施工した後に断熱材が適切に施工されているか事後検証を行うことが肝になります。例えば、従前に測った表面温度と改修後に測ったものを比較して、ある部分が10℃上がったと言ってしまうことは危険です。周辺の温熱環境の条件は測定する時々によって変わってしまいますので比較は難しいのです。純粋に現場を見て表面温度をお客様に確認してもらうことに使うのがよろしいかと思います。
 その他の使い方として耐震改修を同時に実施する場合、筋交いは壁の中に隠れていたりするため、確認することが難しいです。その時にサーモグラフィの画面に現れる表面温度の変化で、筋交いを確認することができる場合もあります。