講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
島原万丈さん・木下斉さん「五感に訴えかける街−センシュアス・シティ・ランキング」
島原万丈さん:(株)ネクストHOME’S総研所長。(株)リクルートリサーチのマーケティング部門を経て、リクルート住宅総研で主任研究員を務める。著書に『本当に住んで幸せな街−全国「官能都市」ランキング』(光文社新書)など。

木下斉さん:一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事を務めながら、数々の地方都市活性化事業に取り組んでいる。著書に『稼ぐまちが地方を変える−誰も言わなかった10の鉄則−』(NHK出版新書)など。



1.フォーマットから外れた街の魅力
2.街を官能検査で評価する
3.「動詞」で都市を評価する
4.センシュアス・シティとマーケティング
5.五感に訴えかけるセンシュアスな街とは?
6.自動車の街と歩ける街
7.計画された近代都市の限界
8.商業活動の重要性
9.ナイト・タイム・エコノミー
10.五感で捉える街の魅力
11.まとめ



1.フォーマットから外れた街の魅力
鈴木:  2015年にHOME’S総研から『Sensuous City[官能都市]』(以下、センシュアス・シティ)というレポートが発表されました。いわば、五感に訴えかけてくるかどうかによって、街の魅力を測ってみようというレポートです。2016年にはその内容を収録した『本当に住んで幸せな街』も出版されました。また島原さんといえば、リクルート在籍時代にまとめられた『愛ある賃貸を目指して』が、賃貸住宅経営者に大きな影響を与えたことでも知られています。
島原:  1989年にリクルートに入社し、マーケティング部門で16年間ほど働いてきました。ずっと化粧品や自動車といった一般消費財の商品開発や広告を扱っていましたが、最後の1年間は広告媒体そのもののマーケティングを担当しました。
住宅部門でレポートを作成するようになったのは、その後です。2008年に『既存住宅流通活性化プロジェクト』というレポートをまとめてからリノベーションに触れる機会が増え、その延長線上で都市計画のフォーマットでスクラップ・アンド・ビルドされる街に対する違和感を意識するようになりました。
鈴木:  先ほど大井町駅前の横丁を歩いて五感に訴えかける街の実例を見てきましたが、センシュアス・シティでは再開発で消えてしまった武蔵小山飲食店街を紹介していますよね。
島原:  地元では「暗黒街」という愛称が付いていた界隈です(笑い)。近代的な都市計画分野がうまく扱えなかった街があると思うんです。確かに、そうした路地裏の横町は防耐火や耐震上の問題を抱えていたと思いますが、街の魅力を実感していた人も沢山いたわけです。これまでも、そうした街の存続を望む声はあったと思います。しかし、その価値や魅力を可視化できなかったため、安全性や効率性などの工学的な正当性に対してまともな議論すら出来ていなかったと思うんです。そこで、本当に住んで幸せな街を数字で表せないかと考え、センシュアス・シティ調査をHOME’S総研で実施することにしました。



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