講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


9.ナイト・タイム・エコノミー
木下:  日本の小売販売額が頭打ちになって20年が経過し、人口縮小も急速に進んでいます。構造的な変化が必要な状況ですが、従来型の無機質な都市インフラ開発が未だに続いています。作った後の道路や建築をどう積極的に使うか、その先が考えられていないわけですよ。一方で、インターネットが社会に普及して、我々が商品を買いに行かなくても届く時代になった。わざわざインフラを使って店に行って物を買うという習慣が、どんどん変わってきています。
島原:  インターネットによって私たちの生活は大きく変わりました。このような状況の中で街の魅力になるのは、飲食のような「身体性」に関係したことだと思います。スカイプで話しながら一人で宅配ピザを食べても、美味しくないですからね。今回の調査では32項目のアクティビティを調べましたが、その中には「夜」の要素がかなり含まれています。
木下:  従来の街の評価にはなかった視点です。でも、昨今の都心回帰がますます進み、職住近接志向が強まると、ナイト・タイム・エコノミーが成長すると思います。実際、アメリカでもヨーロッパでも、ナイト・タイム・エコノミーを重視する地域活性化事業が増加しています。例えば、ドイツのシュトゥットガルト市は、トランジットモール化のために中心市街地周辺に公共駐車場を作っています。街中を歩いてまわれるようにして、うまいものが食べられる小さな飲食店などの集積を積極的に進めている。そうした事業をメルセデスやポルシェが支援しているんですが、その理由を聞くと彼らの本社の存在価値を高めるためというんです。つまり、立派な本社ビルがあれば良いというわけではない。取引先を集めた本社会議の後に連れて行く飲食店が盛り上がっていて、来た人たちが連泊したいと思うような街でなければいけないという考え方なんです。





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