講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.商業活動の重要性
鈴木:  例えば千里ニュータウンを見ていて強く思うのは、店舗の価値を甘く見過ぎているのではないかということです。実際、戦後に建築計画研究が立ち上がった頃は、商業建築は研究対象にならないという風潮さえあったようです。とにかく工夫をしなければいけないことは確かですが、対応できていない印象ですね。
島原:  多様な商業活動は多様なニーズが前提になります。特定の年齢や階層を大量に集めてしまうと、偏った商業ニーズしか生まれません。新築建物の家賃の高さもテナントを画一的にする圧力になります。タワーマンションを中心にした再開発のショッピングモールがその典型例です。一方、リノベーションは低廉なコストでの出店を可能にするので、雑多な店舗の新規進出を促しながら、漸次的に街を変えていく力があります。
木下:  都市景観の篠原修先生から聞いた話ですが、土木分野でも商業活動には関心を払ってこなかったそうです。建築と土木の両分野がそうした考え方で街づくりを進めてきたわけですから、出来上がった街が無機質に感じられるのも当然なのかもしれません。
島原:  結局、開発行為の中では道路が最上位なんですよ。その次に都市計画、公共建築、住宅と続いて、小売店舗や飲食店舗は最後にくる。しかし一定のインフラが完成した後は、使う側から考えることが重要になって、こうした順序が逆転するのではないかと考えています。



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