フィンランドの高齢者住宅・施設事例から見る日本のこれから
〜日・フィンでの居住者アンケート結果を交えて〜 <その1>

(3) 高齢者のための住まい

1) 24時間サポート付き高齢者住宅
 フィンランドの高齢者の住まいが目指している方向性は、日本とほとんど変わりません。基本的には在宅で暮らし続けられるようにして、日本でいう介護施設は減らしていくという方向性です。さらに高齢者住宅を整備して、施設を住まい化していくということも目指してきました。他の北欧諸国においても、介護施設は廃止して、住まいの中でサービスを提供しながら住み続けられるような仕組みをつくっていくということを行っていますが、フィンランドが他の北欧諸国と異なる点は、施設はまだ残していることです。施設は減らす方向性ですが、まだ制度として残しており、それを高齢者向け住宅「サービスハウス」への転換を進めています。 グラフ1のように2000年から2015年までの15年間で顕著な点は、24時間サポート付き高齢者住宅が6倍になっていることです。当初の一般型高齢者住宅には、24時間サポート体制などはついていませんでしたが、入居者の高齢化が進み、24時間サポートが必要になっていくことから、24時間サポート体制のついた高齢者住宅が増加しました。日本の療養型病床群にあたる、医療施設内の長期療養のための病床は徹底的に減らしています。方向性は極めて明快で、目標を定めながら黙々とどんどん進めています。グラフ1から構造の変化がはっきりわかります。 fig7
2) 目標値の設定
 現在のフィンランドで、高齢者に関する議論の中で65歳はあまり対象になっておらず、ターゲットは75歳以上です。65歳の方はほとんどお元気で、75歳以上の人口の数字を見ながら、目標値を定めて政策を進めています。75歳以上人口の90%以上が暮らし続けられる住宅を整備していくということが、極めてわかりやすく進められています。
fig8  図1のように2010年の75歳以上人口の中で、在宅に暮らしている人はまだ39万人と89.5%を占めます。65歳から75歳で在宅に暮らしている人は50.5万人です。つまり、65歳以上の89.5万人くらいが在宅でした。2030年時点で65歳以上の91〜92%が在宅で暮らすということを想定した場合、145.7万人となります。フィンランド政府は2030年には100万戸の75歳以上高齢者にアクセシブルな住宅という国の目標を掲げています。現時点で75歳以上高齢者にアクセシブルな住宅というのは28万戸しかなく、残りの72万戸が必要として、民間の集合住宅、戸建て住宅、公営住宅を合わせて、32万戸新築、40万戸改築のための政策を進めています
 ヘルシンキのような都市部では、日本と同様に、エレベーター無しで建てられた集合住宅が多く、エレベーターをつけてアクセシブルな集合住宅とすることが進められています。これは当たり前と言えば当たり前ですが、しっかりやらなければいけないと、国としても大きな方針を立てて進めています。