フィンランドの高齢者住宅・施設事例から見る日本のこれから
〜日・フィンでの居住者アンケート結果を交えて〜 <その1>


2) フィンランドらしさ
 “フィンランドらしさ”というのを様々な場面を通してご紹介していきたいと思います。写真1は、人が並んでバスを待っているところなのですが、日本だとバス停で待っていれば、バスは停まってくれます。fig1しかしフィンランドではそうはいかないのですね。皆がバスの来る方向を集中して見ていて、バスが来ると、一斉に日本のSuicaのようなカードを持って手を挙げるのです。このカードはリフレクターになっていて、夜の暗いときでも光の反射で光ります。誰か1人がカードを挙げれば、バスは停まるだろうと思うのですが、全員手を挙げます。つまり、とにかく自分の意志は自分で表明しなくてはならないということです。これが1つの場面ですけれども、彼らの生きている本質の全てにつながっていると感じます。
 フィンランドは世界で唯一、原発の核廃棄燃料の地下貯蔵施設をつくっているところです。フィンランドは原発を4基持っていますが、地下500mぐらい掘ってつくった「オンカロー」という施設に、核廃棄燃料をすべて収めるようにしています。フィンランドには地震が無いとか、地盤が非常に硬いといった要素がありますが、原発を持つ以上、妥協しないでここまでしっかりつくります。10万年後の社会の安全ということまで意識して、原発というものを位置づけて、そのための準備をしているということは、フィンランドらしいところです。
 写真2は私が家族で住んでいたアパートの、共用ランドリールームです。集合住宅で洗濯機は共用です。みんな家に一台ずつ洗濯機を持っている必要はなくて、合理的と言えば合理的ですね。洗濯機を動かすときは、携帯電話で電話すると自動的に電源が入って、料金は携帯電話から落とされるという仕組みです。人口密度が低い中で、いかに手間をかけずに効率的に物事を動かすかということで、携帯電話やインターネットなど、使えるものは徹底的に使っていくということをやっています。写真3は乾燥室ですが、洗濯したものを下着も含めて乾燥させています。日本だと女性の下着を皆と一緒に干すのはいやだなとなるでしょうが、意外と平気で干しています。
fig2  フィンランド人はコーヒーが大好きで、コーヒーの1人あたり消費量は世界でも1、2と言われていますが、皆が同じコーヒーを買っています。生活の形とか、本当にシンプルな国だなと思いました。果物や野菜は全部量り売りで、自分の欲しいものだけ、量って袋に入れて買うというやり方で、日本のようにプラスチックのパックとか大量のごみがでるということはありません。写真5は20年前の写真ですけれども、スーパーのレジのところに、少し広いレーンがあって、車いすやベビーカーが優先ですよという看板がありますが、日本でこういう配慮というはまだありません。レジのスタッフは大体座っています。立ったままレジをやるのは腰に悪いということです。
fig3  夏休みになるとヘルシンキの各地にある公園で、このような光景が見られます。夏休み期間も働いている親も多いですから、子どものご飯が問題になるのですが、ヘルシンキ市の福祉サービスで、子どもがお椀をもって公園に来てお昼ごはんが提供されています。これは、夏休みの間ずっと続きます。隣の町から子どもが来ることもありますが、どの町から来たとか細かいことは言いません。日本のような、カード見せるとか、もらったらスタンプ押すといった面倒くさいことはやらないのです。
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