「これからの高齢者住宅」−サ高住・住宅型有料・特定施設・GH
「小規模・地域密着・多機能」−原点は『宅老所』・在宅死

【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:小規模多機能併設の高齢者向け住宅を見学したことがあります。そちらでは小規模多機能の『泊まり』の部屋数の中で、地域からの小規模多機能利用者が『泊まり』を使いたいときに使える枠を設けておられましたが、そのような枠を設ける義務は、本来は無いということでしょうか。
浅川氏:そのような枠を設けなければならないとの法律上の規定はありません。枠を設けなくても、事業者として消費者のニーズに、法律に則って応えています。
成熟研委員:弊社では8ヶ所の小規模多機能を運営していますが、稼働率65%くらいです。稼働率は行政のスタンスとケアマネで随分と左右されます。ある市町村では要介護認定がおりた段階で、利用者に小規模多機能のお話と、ケアマネの紹介をしてくださるため、稼動率90%以上になります。しかし他の市町村ではそのようなことが行われず、なかなか稼働率が上がりません。厚労省の課長会議などの記録を読むと、市町村に小規模多機能を増やすようにお話しているようですが、2018年の介護保険法改正でどうなるのかなと考えています。
浅川氏:厚労省も小規模多機能は最も優れたサービスといっていますが、自治体は隣の市町村より介護保険料が高くならないよう、サービスを抑える傾向があります。グループホームと小規模多機能を公募制にして、3年間で数件しか新設を認めないようにしています。今の市町村は要介護認定率を下げて、介護サービスが使われないようすることに力を入れていますが、これは間違った方向です。介護保険法で、保険者である市町村は、条件を満たしたサービスは認めなくてはならないことになっています。介護保険制度は地方分権の試金石と言われており、住民の声を反映させることが大原則となっています。しかし実際には3箇年計画の検討委員会には、ごく一部の住民しか参加できず、一般住民の声は反映しにくくなっています。市町村を変えるには、まず市町村議会を変えることだと思います。住民パワーで、議員に小規模多機能について議会で質問していただくといったことが行われれば、変わってくると思います。
成熟研委員:サ高住では小規模多機能併設により、手厚いサービスが行われる特定施設と同じ暮らし方ができ、かつサ高住は特定施設よりも優れているということでしょうか。サ高住の特定施設についてはどのように評価されますか。
浅川氏:特定施設では、入居者がずっと同じ部屋で住み続ける権利はありません。契約書に、認知症発症などで部屋を変えられるかもしれないことが書かれています。サ高住は自宅の延長となる『住まい』であり、賃貸借契約によるもので、住み続ける権利があります。今の高齢者向け住宅の中で『住まい』はサ高住だけです。サ高住特定施設は、運営は特定施設として行われますが、ベースが『住まい』のサ高住であり、高く評価できます。
成熟研委員:グループホームや小規模多機能の中には、市町村の端の方に立地しているものがあります。隣の市町村の居住者から使いたいという希望が寄せられても、市町村境界をまたいでの利用はなかなか行われません。
浅川氏:それは市町村の首長同士の合意でできることなのですが、市町村がやりたがらないようです。やはり住民の声として署名を集めて陳情するといった、住民パワーが働くことで変わると思います。事業者が行うとお金儲けのためにやっていると捉えられがちですが、住民パワーは市町村を変えることができます。


以上