「これからの高齢者住宅」−サ高住・住宅型有料・特定施設・GH
「小規模・地域密着・多機能」−原点は『宅老所』・在宅死

(5) サ高住と地域包括ケア

fig9  高齢者向け住宅は、外部の介護サービスを利用者が自己決定するサ高住・住宅型有料老人ホームと、施設内部のスタッフが包括されたサービスを行う特定施設・特養に分かれます。ゆくゆくはサ高住や住宅型有料老人ホームの方が増えていくと予想されます。サ高住と住宅型有料老人ホームとの大きな違いは、サ高住では建設費補助が出るという点と、居室面積が18m²以上とされている点です。
 地方では、18m²の家賃は地域の相場で高いと受け止められ、12m²の住宅型有料老人ホームにせざるを得ない事業者が数多くあります。
 高齢者向け住宅で訪問介護を利用することには、大きな危険性があります。つい最近ですが(平成28年12月)、さいたま市の住宅型有料老人ホームで、入浴中の死亡事故が生じました。訪問介護で入浴を行っていたのですから、この時は7人の入浴者に7人のスタッフがついていなければならなかったはずですが、3人しかスタッフはおりませんでした。こういうことは事故が起こらなければ表面化しません。
 図11のように、これからの高齢者は首都圏1都3県や中京圏、福岡、広島といったところで急増します。地方では既に施設サービスが行きわたっており、新しい利用者は増えません。地方包括ケアは、全都道府県ではなく、高齢者が急増するところで進める必要があります。
fig10  図12は、縦軸に費用、横軸にQOLをとったものですが、病院・施設のような制約された非日常では、費用が高く、QOLが低くなります。厚労省が植木鉢モデルで示した地域包括ケアシステムにより、高いQOLが実現されます。特養は、病院をモデルにつくられたもので、普通の生活が大きく制約されます。夜中に友達が遊びに来るようなことはできません。
 オランダや北欧では、1990年代にそのことに気が付き、『脱病院・脱施設』『地域のケア付き住宅』が先行して進められています。
fig11  地域包括ケアシステムは、以前は植木鉢モデルではなく、住まい・生活支援・介護・医療・予防の5つの輪による『五輪図』でした。植木鉢モデルでは、医療・看護、介護リハビリ、予防・介護とより複雑になり、地域包括ケアがあれば病院・施設から自宅に戻ることができるという考え方になっています。
 しかし、『五輪図』の頃から、高専賃と生活支援の一体的整備が地域包括ケアの主役になると位置付けられていました。これは『拠点型サ高住』と全く同じ考え方です。
 高齢者の自宅での生活が難しい理由は、自宅周辺に医療・介護がないことです。医療に関して、地域包括ケアでは、自宅に来て診療する家庭医と訪問看護が必要です。看取りまで行う在宅医療については、生活全般を見る看護師が一番の頼りです。しかし、在宅療養支援診療所も訪問看護ステーションも不足しています。
 サ高住に医療と看護、介護がついているかはサ高住オーナーがどう取り組むかにかかっています。