「これからの高齢者住宅」−サ高住・住宅型有料・特定施設・GH
「小規模・地域密着・多機能」−原点は『宅老所』・在宅死

ジャーナリスト 浅川澄一

成熟社会居住研究会では、元日経新聞編集委員でジャーナリストの浅川澄一氏をお招きし、これからの高齢者向け住宅についてのお話を伺いました。地域包括ケアで『拠点型サ高住』が主役になることや、小規模多機能を併設した『拠点型サ高住』が利用者にとり優れたものになることなどを伺いました。

(1) 自宅に最も「近い」高齢者向け住宅はどこか

 本日は、利用者側がこういうものを求めているのではという視点から、これからの高齢者住宅についてお話ししたいと思います。
fig1  図1は、自宅で過ごすことができなくなった方の行き先として、自宅に最も「近い」集合住宅を考察したものです。左からお薦めする高齢者向け住宅の順番で並べています。
 一番左のグループホームは、利用者9人の小さな単位の中で、スタッフが日中必ず3人配置されるという、最も優れたものと考えています。
 その右側のサ高住と住宅型有料老人ホームは、賃貸住宅であり、外部の介護サービスを利用するという形式は同じですが、サ高住では国から建設費用の補助が出ています。ここにどういった医療や介護サービスを導入するかということが一番のポイントで、訪問介護・24時間訪問・デイサービス・小規模多機能といった機能が併設されているものが多いのですが、小規模多機能が、私が最もお薦めするものです。
 一番右側の特定施設 (介護付き有料老人ホーム) と特養はお薦めできません。
 利用者にとり、スタッフの人数と時間がどれだけ十分に配置されているかということが大切であり、グループホームは現在20万人分供給されていますが、これが200万人分になると、特定施設や特養は要らなくなるということが私の基本的な考えです。80歳を過ぎられ、認知症の症状が現れた方々にとり、グループホームに入ることが一番の選択肢です。ただ、グループホームの絶対数が少ないため、自宅で過ごせなくなった方は、右側のどこかに入居せざるを得ない状況です。
 安倍首相は2016年1月の所信表明演説の中で、『新三本の矢』の1つとして介護離職ゼロを目指し、特養とサ高住を増やすと述べ、図2のような補正予算が組まれました。