「これからの高齢者住宅」−サ高住・住宅型有料・特定施設・GH
「小規模・地域密着・多機能」−原点は『宅老所』・在宅死

(3) 分散型サ高住

fig4  サ高住のもう1つの新しいタイプとして、『分散型サ高住』というものがあります。今のところ、板橋区のUR高島平団地でしか実現していませんが、将来、様々なニュータウン・団地で増えて行く可能性が高く、私はとても評価しています
【ゆいま〜る高島平】
 従来のサ高住では、状況把握と生活相談のスタッフの日中常勤が必要でした。しかし制度の見直しにより、500mの距離内にいれば、状況把握や生活相談のスタッフはサ高住から離れていてもいいということになりました。そうなると、サ高住の一軒一軒にスタッフのための部屋を借りなくても、例えば団地内商店街の空き店舗を借りて、そこから各サ高住へのサービスを提供するという、極めて効率的な運営が可能になります。
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 高島平団地は1970年代に入居が始まった団地で、独り暮らしの高齢者が多く、たくさんの空き室が発生していますが、(株)コミュニティネットが事業者となり、11階建ての1棟121室の内、30室の空き室を、サ高住「ゆいま〜る高島平」として改造しました。
 入口に手すりのついているお部屋がサ高住に改造したものです。入居者にはまだ中重度要介護の方はおられず、介護保険サービスは提供されていません。入居者が個別に訪問介護やデイサービスを利用しておられます。サ高住改造のポイントは、キッチンとお風呂をお部屋の真ん中に移したことです。やはりご高齢になるとトイレが近いし、キッチンも離れたところにあるより真ん中の方が利用しやすいと思います。
 
 図6は「ゆいま〜る高島平」にお住まいのAさんの居室です。Aさんは高島平団地のエレベーターの無い住棟の5階にお住まいでしたが、膝を悪くされ、エレベーターのついた11階住棟に移られました。まだお元気でプールや映画に出かけられています。朝起きて自分でボタンを押す安否確認を利用しておられます。安否確認はこれで十分です。トイレは補助具を入れて使いやすくしております。
 普通の賃貸住宅でよく見られるような、玄関ドアを開けるとすぐに居室ではなく、玄関の空間を広くとっています。これもいいアイデアだと思います。
 「ゆいま〜る高島平」は、(株)コミュニティネットとURの連携で実現しました。URは、連携する事業者がおられれば、このようなサ高住をこれからも広げる意向ですが、第2号はまだ出てきていません。
fig6
 さきほどの拠点型サ高住に分散型サ高住を組み合わせるとどうなるか。つまり図7のように、拠点型サ高住から、500m圏内の複数のサ高住にサービスを行うことができるようになれば、理想型と言えるのではないかと考えています。