講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 弱い個人と柔らかな絆
松村:  家庭のあり方も変わってきています。その点では西川祐子さんが極めて示唆的でした(ライフスタイルを見る視点第5回)。西川さんによると「家庭」というのは明治政府の造語なんです。次男や三男をちゃんとした働き手として送り出していく戦略から出てきた。だけど、そうした近代国家づくりのための家庭は成立しなくなっていて、これからはバラバラになった弱い個人の時代になる。だからそうした社会では、弱い個人を結ぶ柔らかな絆が大事になるというわけです。実際、東京などで圧倒的に多いのは一人世帯です。若年者から高齢者までが独りで暮らしていくとき、何らかの絆がない限り生きていけない。中田さんの長男同士の飲み会も柔らかな絆の一つでしょうね。
鈴木:  西川さんは、家の継承の仕方についても鋭い指摘をしていました。家は代々続いていくものと考えがちですが、もはや無理です。町家などでも、子供や孫が受け継ぐのでなく、他者が継承しても構わないんじゃないかと言っていました。
松村:  事業もそうです。繁盛している町中華があっても、子供に継ぐ気がないと畳むことになってしまう。独自のレシピがあって道具も揃っていてお客さんもついているのに、消えてしまう。
鈴木:  継承の重要性は郊外住宅にも当てはまります。日本のニュータウンは入居者の世代がやっと回り始めたところです。でも西川さんがニュータウン出身の学生に聞いたところ、戻る気はないという答えが多かったとのことでした。
松村:  最近は違う流れもあるようですよ。4、5年前のシンポジウムで聞いた話ですが、「結局、俺らの故郷は多摩ニュータウンだよな」と言って30代くらいの人たちが戻っている。彼らにはニュータウンで育った第一世代という意識があって、地元活動を新たに始めたりしている。
鈴木:  限界団地のようなところは厳しいでしょうが、多摩ニュータウンなら可能性はありそうです。団地は夢の街として建設された後、均質でつまらない街と思われるようになりました。でも独りで住むなら十分な広さがあるし、地下鉄を利用できるような団地もあります。団地の見直しは様々に起きていて、小林聡美さんと小泉今日子さん主演のTVドラマ「団地のふたり」(原作 藤野千夜)や、やはりドラマになった「しあわせは食べて寝て待て」(原作漫画 水凪トリ)など、なんとか続いている人間関係はじめ、団地の環境が魅力的に描かれています。



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