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| 中田: |
最近は神戸と淡路島の二拠点生活をするようになって、中継地としてここを使っています。向こうには若い世代が少ないので消防団の部長とか農会のまとめ役とかが回ってくる。地元の付き合いは亡くなった父親がしていましたが、僕にお鉢が回ってくるようになったんです。家族の生活拠点は神戸にあるので、僕の都合だけで淡路島に引っ越すとは言えません。それで二拠点生活になったんですが、地元の村を見渡すと一人で帰ってきた長男がけっこういる。長男の責任感だけで村が維持されている感じです。でも意外と楽しかったりする。みんなが僕を知っていてそれとなく見てくれている。かつては煩わしく思っていましたが、そういうのが嬉しい。日曜日の夕方には「焼肉しようか」って長男たちが集まり、お祭りの準備の話をしていたりします。
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| 松村: |
興味深いですね、今までに聞いたことのない二拠点生活です。多くの場合、二拠点生活は地方移住と関連しています。福井県に移住したある夫婦から伺った話ですが、東京で暮らしているうちに「生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなった」そうです。確かに東京暮らしはすごく厳しい。職場で孤立感が深まっても、頼れるコミュニティはありませんから。
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| 鈴木: |
25年前にzoomはありませんでした。どこからでもオンラインで仕事ができるようになったこと、家族関係の変化や、親の介護の事情で、二拠点あるいは多拠点の生活が増えていると思います。そういえば関係人口という概念も昔はありませんでした。
あとサラリーマンの仕事自体が面白くなくなったことも関係あるんじゃないですか。かつての大企業は、新しい分野に進出したり新しい支社を作ったりしましたが、そうしたダイナミックさを失っている。最近話題になっている「働く人が減っていく国でこれから起きること」(河田皓史著、朝日新聞出版、2026)によると、仕事が面白くない上に結婚しなくなったためにFIRE(Financial Independence, Retire Early)が増えているそうです。独り身だったらそれほどお金はいらないので、FIREするのは簡単なんですね。
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| 松村: |
働くことが高度経済成長期とは全く変わっている。僕たちがお世話になった大野勝彦さんがセキスイハイムの開発を頼まれたのが26歳頃で、それを頼んだ積水化学の責任者も32歳くらいなんです。今だったらベンチャー企業にしか見られないような出来事だけど、当時は多くの会社で普通に行われていた。
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| 鈴木: |
一生懸命働く恩恵が全員に行き渡る実感があったから、そこまで熱中して働いたんでしょうね。今はそこまで熱中できないし、何なら働かなくても生活が成り立ちます。「はたらく彼女と、つくるヒモ」(まいったねぇ原案、野宮レナ作画、KADOKAWA,2023)という実話を元にした漫画があります。ある日、パティシエとして働いていた男性が同棲している彼女に言うわけです。「しばらく休みたい」って。早朝から働きずくめで日の光を見ない生活がずっと続いて、とうとう耐えられなくなった。そうしたら彼女が「いいよ。その間は私が食べさせてあげる」と言って、彼女の稼ぎだけで二人が生活するようになる話です。休んでいる間、男性は美味しい食事をつくってパートナーを元気にする。なるほどこういう関係があるのかと新鮮でした。
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