講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5. セルフリノベーションによる店舗づくり
森:  現在の店舗には4,000から5,000種類くらいの本を置いていて、平均すると1日当たり15人ほどのお客さんが来店しています。最近は高校生くらいの年代も、時々来るようになりました。何か探す目的で入ってきてもピタッとくる本は見つからないかもしれませんが、よく分からない本を楽しんで眺めてもらえればと思っています。ちなみにこの店舗は小さな倉庫を増改築したものです。最初は敷地奥に建てた小屋に寝泊まりしていましたが、その後、店舗を増築したり小屋をギャラリーに変えたりして現在に至っています。
鈴木:  湯梨浜町に来たとき、まず左官屋でアルバイトをしたと聞きました。その時に大工作業を学んだのでしょうか?
森:  そこでは左官作業を学びました。その左官屋さんは跳び箱の屋台で行商していたら声をかけてくれたんですよ。「本屋をやりたいらしいね。暇があるならうちでバイトしたら」って。その左官屋さんは、粘土やスサなどから本格的な漆喰を作っていて、実際やってみたら本当に面白い。しかも、建物づくりの楽しさを様々な人に味わって欲しいという考えの持ち主なので、どんどん教えてくれる。原発事故の直後は、仕事のあてもなく東日本から逃げてきた人たちがポツポツいたんですが、僕のようなプー太郎を見つけるたびに声がけしていた。別に職人にならなくても構わないからって。
鈴木:  それでは大工作業はどこで身につけたんですか?
森:  小屋を建てると宣言したら「材料やるから倉庫に来い」と言ってくれた大工さんがいたんです。でも貰いに行ったら「図面のないやつに材料をやるわけにはいかない」って。なんとか図面を書いていったら「土台の継ぎ方が分かっているのか」と聞いてくる。継手を刻めるようになったら材料をやるという話になって、蟻継ぎの修行が始まってしまった(一同爆笑)。蟻継ぎを作れるようになっても「柱の継ぎ方が分かっているのか」「桁の継ぎ方が分かっているのか」と続いて、結局3ヶ月くらい朝8時から晩まで大工さんの作業場で継手づくりに励むことになりました。その間、アルバイトは一切できなかったので厳しい日々でした。
松村:  可愛がってくれたんですね。それにこの建物の増改築にはプロの目が一応は入ったわけですし。
森:  ものすごく感謝しています。でも表面上は怖いんですよ。ちょっと恐いヤンキーの先輩みたいな感じです。




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