住団連:北欧については我々住宅会社も、とても関心をもっています。視察に行きたいという気持ちをもっています。住宅会社の中には北欧に工場をもっているところがありますが、住宅生産について北欧諸国は同じような仕組みなのでしょうか。
水村教授:とてもまちなみがきれいで、ぜひ行かれるといいと思います。CLT (直交修正板) についてお話を伺ったときに面白かったのですが、オーストラリア産が最も多いとのことです。北欧は森がたくさんあるのですが、北欧産よりオーストラリア産の方が安いとのことです。
住団連:北欧ではCO2削減のために、森林伐採は、厳しく規制されているとのことですね。
水村教授:北欧では大都市でも公共交通で20分も行くと森にたどり着きます。北欧では自然享受権といって、自然を楽しむ権利ということが法律で位置づけられています。森の中に入って、きのこを摘んだり、ベリーを摘んだりということができるのですね。ノルウェーの場合、OBOSの社員の方のご自宅に伺ったのですが、そのお宅はオスロの郊外にあるのですが、ここから先の森林は一切手につけられないという境のところにあって、庭先には鹿も出くるのですが、ノルウェーの方は、そうした自然が残されたところを週末に歩いて、自然を味わうことをとても愛しています。
住団連:OBOSの高齢者住宅は居住者が所有しているものですか。
水村教授:居住権所有です。ただ、こういう共同空間が豊かな住宅や自主運営は、やっぱり一般的ではないようです。住みたい、買おうかなという高齢者からの、共同空間を削って価格を下げてくれといった申し入れも多くあるようです。
住団連:高齢者住宅におけるアクセシビリティのレベルの高さのお話を伺いましたが、日本の場合、高齢者住宅の各戸の玄関は防火性等のために重い開き戸になっていて、車椅子使用者には自力での開け閉めが難しいという問題があります。北欧の高齢者住宅を日本と比較して、玄関のつくりなどに違いはありますか。
水村教授:まだ詳しくは調べていないですが、アクセシビリティについて、ノルウェーの方がスウェーデンよりもかなりレベルが高いのかなと感じています。肢体不自由や車椅子利用になった場合は行動が大きく制限されますが、国の福祉施策として様々な補助具などが提供されます。重い扉もボタンを押すと動くような設備が設置できていると考えられます。
住団連:GDPに占める福祉施策への公的支出の割合がノルウェーでは50%を超えているとのことですが、日本では何%くらいでしょうか。
水村教授:調査によって福祉施策として網羅する範囲が異なるので、データ比較はできないのですが、国立社会保障・人口問題研究所による2022年度の社会支出 (OECD基準) の対GDP比は25.12%です。ただ福祉に関する日本の財政支出やサービスのレベルは高いと言われます。訪問入浴サービスなどは、ヨーロッパの人たちには想像できないものだそうで、かなり効率の高いサービスが日本の中では展開されていると考えられます。日本の場合は高齢者の占める割合が急速に大きくなったということがあります。
住団連:ノルウェーでは単身居住が多いようですね。
水村教授:そうです。日本のような2世帯居住は見られません。単身居住でも住宅手当を受け取っておられる方が結構おられます。
住団連:ノルウェーでは新築や建替えは頻繁に行われているのでしょうか。
水村教授:ベルゲンにもBOTという住宅協同組合があるのですが、少しずつ人口が多くなって、今まで住宅が建っていなかったところに集合住宅が建てられています。ただ一方で、ノルウェーの友人が大きな戸建て住宅を買ったのですが、その戸建住宅は築100年くらいという話です。中古戸建ての流通が主流になっていて、その理由を聞くと、基礎以下の配管の部分は自治体が管理しており、メンテナンスは公費で行われているとのことでした。中古の戸建て住宅が市場で流通されている、その仕組みはとても魅力的で、調べてみたいと思っています。普通の若い人が住宅を持てることが重要と彼らは考えていて、結婚してちゃんと子どもを育ててもらうということですね。現在の日本では住宅要配慮者から若者は外れてしまいますが、今の住宅の価格高騰を見ると、これでは結婚して子どもを育てることが難しいなとなってしまうのではと思われます。若者が自分たちでも住宅が手に入る、結婚しよう、子どもを育てようと思えるようなところが実は一番重要ではないかと考えております。
以上