持ち家社会の新しい住まい
ーノルウェー社会の新しい動向ー
4) ノルウェー国立住宅銀行 (Husbanken)
セーフティネットを社会的にどう構築するかということと関係してきますが、ノルウェーには戦後国立の住宅銀行であるHusbankenという組織が設立されました。基本的には日本の住宅金融公庫庫と同様に、国民の持家取得を支援する融資を行う組織でした。しかし1980年代以降、住宅市場の民営化が進む中で、住宅銀行の役割も変化し、今ではセーフティネットの強化や自治体支援などにシフトしています。
Husbankenのホームページからの抜粋ですが、「安全かつ制度を熟知した住宅ローンの提供者」「デジタル化推進者」「自治体およびその他の住宅政策関係者のためのパートナー」「社会住宅の供給に関する国の中心的センター」に取組んでいます。ここの社会住宅とは、住宅要配慮者に対する住宅ですね。
そして現在ノルウェー政府はHusbankenの強化を図っています。Husbankenにお勤めの方によると、その社会的使命は、住宅市場における人々の不利な立場を防止し、より多くの人々が適切な住宅を取得・維持できるよう支援するとともに、自治体の住宅政策の取り組みを支援することとのことです。そして自治体における住宅政策業務と地域住宅市場への包括的アプローチ、地域や自治体に即した強い存在感、住宅市場における専門家の役割のさらなる発展、賃貸住宅市場における国家的レベルでの専門家としての役割、地域を中心に捉えた役割の強化、高齢者向け住宅プログラムの実施とされています。
Husbankenの事業である金融商品の例ですが、1つは誰もが現在暮らす住宅にとどまれる機会をもつべきであるという考えにもとづく住宅手当です。さらにできるだけ多くの人々が自分自身の住宅を所有する機会を持つべきであるとの考えからスタートアップ融資を行っています。ノルウェー社会でとても面白いことなのですが、国民は若いうちからなるべく家を持とうとしており、持家に住んでいる大学生もいます。例えば、結婚していない大学生のカップルが二人でスタートアップ融資を受けて、それを合算して一緒に住む住宅を買うということを行うそうです。その延長線上に転売すれば必ず利益が出るということがあるようです。若いうちから住宅を取得するということへの社会的支援が非常に手厚いというのは、とても興味深いことです。そして融資と助成金の事業により、誰もが適切で安全な居住環境を確保できる質を備えた住宅建設に貢献するということをうたっています。
Husbankenの予算では、スタートアップ融資や建設・改修への融資などのLendingBudget、住宅手当、住宅改修の資金の助成、学生向けの住宅への助成などがあげられています。オスロは特に顕著なのですが、住宅価格の高騰により若い人の住宅入手が困難になっており、学生に対する住宅を提供しないといけないということが社会的に言われていることです。さらに地方についてですが、2025年以降、地方における住宅所有や住宅改修に対する助成が予算に位置付けられています。
(4) 本日のまとめ
私もノルウェーの研究を始めて2、3年で、まだ分からないことがあるのですが、参考となる点として次の様にまとめることができると考えられます。
1つは、戸建て・持ち家社会の伝統を継続しつつ、アフォーダブルな住宅価格を維持するという点で、住宅協働組合と民間企業による住宅供給体制が貢献していると考えられます。
そして、これはスウェーデンより少し遅れて始まった印象ですが、高齢者に新しい住宅を提案していこうという動きがあります。北欧では、高齢者自身の自主管理・自主運営が高齢者自身の健康維持につながるという見解があるようです。要介護になった人々に対するものとしては、社会福祉サービスとして、ナーシングホームや介護付け住宅など介護施設が存在していますので、高齢者自身がサステナブルに、よりよい環境を実現していく方向性で住宅提案することが目指されています。
そして、高齢者に限らず、若者も含めて、居住者同士のつながりが創出されるような住宅の協力性というものが認知されていて、そうしたことがうまく絡み合って、Husbankenの存在もあり、住宅セーフティネット機能は維持される、あるいはその維持のための調整が続いている社会ではないかと現時点では評価しております。
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