講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2. リノベーションスクールの仕組み
徳田:  北九州には、このような人口減少と共に様々な地域課題が存在します。そこで2010年に「小倉家守構想」という都市政策を都市再生プロデューサーの清水義次さんが産学官連携で作り、遊休不動産を活用しながら質の高い雇用創出を図り、産業振興とコミュニティ再生に取り組むことにしました。要するに、空家や空きビルといった空間資源を使って、地域の問題を全て解決するという虫のいい話を考え始めたわけです。一番大事なことは、やれることからすぐ始めること。私たちの研究室では実地調査を行い、全ての空家を地図上にプロットしていきました。こうして空家という地域の宝物の所在を確かめつつ、それらを活用するためのエンジンとして「リノベーションスクール」を立ち上げました。第1回を2010年8月に開催し、北九州では2016年8月までに11回を重ねてきました。
リノベーションスクールでは、全国から集まった受講生を8人組のユニットに分け、4日間で事業計画を練ってもらいます。各ユニットには、実在する空家や空きビルなどを割り当て、その道のプロがファシリテーターとして参加します。リノベーションスクールでは、そうした各ユニットのファシリテーターを「ユニットマスター」と呼んでいます。さらに期間中には、不足している知識や技術を補うレクチャーを受けて頂き、最終日には各物件のオーナーに集まってもらって公開プレゼンテーションを行います。リノベーションスクールの目的は二つです。その一つは「ファイナンスやマネジメントを担う技術者を育てること」です。ハードウェアがあっても、ソフトウェアがなければコンピューターは動きませんよね。それと一緒で、建築のOSとも呼ぶべきファイナンスやマネジメントが伴わないと、リノベーションは立ち上がりません。
もう一つは「プロジェクトを動かすこと」ですが、ここが一番の難所です。公開プレゼンテーションを聞いたとしても、不動産オーナーの方々は何をすればよいのか皆目見当が付きません。実際、第1回リノベーションスクールでは五つの事業計画を作りましたが、一つも事業化できませんでした。第2回も同様でして、このままでは同じことの繰り返しになると痛感させられました。そこで、リノベーションスクールから生まれた事業計画を実現化するため、北九州出身で建築家の嶋田洋平さん、カフェオーナーの遠矢弘毅さん、北九州市立大学准教授の片岡寛之さんと一緒に「北九州家守舎」という株式会社を設立し、転貸事業を中心に取り組むことにしました。つまり、自分たちの出資で作ったこの会社がリスクを負って、リノベーションスクールの事業化に取り組みはじめました。





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