講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.自治会活動を通して
三澤(文):  基本的に昼間のニュータウンに男性はいません。彼のような存在は珍しいので、いつの間にか小学校のPTA会長や自治会会長に推薦されるようになりましたね。
三澤(康):  千里ニュータウンは開発から40年以上経っていますから、30歳代で買った方は80歳に近い。自治会会長でリタイアしていないのは私くらいでした。二世帯住宅は案外少ないんです。便利なところですから一緒に住めばいいのですが、サラリーマンは自分で住む場所を決められないじゃないですか。二世帯住宅を建てて数年間は同居できても、突然転勤になって一世帯分が空いたままの家があったりします。引っ越してきた当初は近所にどんな人が住んでいるのか知りませんでしたが、自治会会長をやったりして、そうした地域事情も少しずつ分かってきました。

それから2000年頃に道路の向こう側の建替え問題が起きて、交渉役を務めました。現在はマンションが建ち並んでいますが、それまでは社宅でした。用途地域が変わってマンション開発が持ち上がったんです。社宅の企業にも行きましたしディベロッパーにも行きました。弁護士事務所にも行きましたし市役所にも行きました。吹田市の斡旋調停にも出ました。あらゆる手を尽くしました。結果的に自治会の活性化に繋がりましたが、大変でしたよ。あの対策だけで住宅設計の4〜5件分の労力を使いましたね。
三澤(文):  でも、そうした自治会活動のおかげで、マンション問題が起こるとアドバイサーとして呼ばれるようにもなったんです。
三澤(康):  最初はどのディベロッパーも住民エゴの押しつけと受け止めます。ですから、金銭的なものを要求しているのではありません、ということをまず伝えます。ここのマンション開発でも、営利面だけで法定容積率200%ぎりぎりの建物を建てようとするけど、千里ニュータウンが40年間培ってきた環境をただ取りしちゃうんですか?あなた方のような大企業は社会貢献という使命も持っているはずだからもう少しちゃんと考えて下さい、と訴えたんです。そうすると、私たちは環境問題を踏まえた正論を言っているだけで、利己的な行動をしているわけじゃないことを理解してもらえました。結局、お互いが歩み寄って、計画地内に緑も増えましたし街路樹も植えられました。公園の整備もしてくれました。これらは、私たちの住環境だけでなく、新たにマンションを購入する人にも望ましいことだったと思います。

残念だったのは、もともと社宅として誘致された住環境が、結果的に企業の営利目的に使われてしまったことです。向こう側の容積率は200%でこっちは80%です。数十メートル離れただけでこれほど極端に容積率が変わってしまうことに釈然としない思いが残ります。例えば緩衝帯になるような地域を作るとか、何か手立てはなかったのか…。市の役割なのか住民の役割なのかは分かりませんし、今はもうできませんが、なすべきことがあったと思っています。マンションには若い人が引っ越して来られたので、結果的に高齢化が進む地域を活性化してよかったと思いますが…。



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