スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン(前編)

 
fig9  ストックホルム県では、在宅緩和ケアに関しては医療圏を8つに設定し、それぞれの医療圏に在宅緩和ケアを供給する病院を配置しています。その中の1つである、Ersta病院という中心市街地にある病院では、緩和ケア病棟と在宅緩和ケアユニットの両方を持っており、2010年には北欧初の子ども・若年者のためのホスピスも開設しています。
 Ersta病院内部の、入院病棟のコモンダイニングとコモンリビングの写真です。スウェーデンの病院はほぼ個室となっています。こちらはナースの方たちの休憩室ですが、かなり住宅に近いようなインテリアとスケール規模で計画されています。この病院の作業療法士は、終末期の住宅改修サービスのコーディネートと提供にも関わっておられるそうです。スウェーデンでは身体機能がかなり低下するとバスタブを排除して、シャワーだけで入浴することで居住継続を図るというような方が、お年寄りに限らず、重い障害を持っている方でも非常に多くいらっしゃいます。それに伴うシャワーの設置や、共用の玄関扉と自動開閉設備の設置、スロープ設置、段差解消、手すりの設置、車椅子の導入、天井走行リフトの設置といったものがテクニカルエイドサービスによって患者さんのご自宅に供給されます。建築法改正によって住宅のアクセスビリティ義務化が規定された1977年以前に建設され、改修を施された住宅と、それ以降に建設された住宅のどちらがケアというものがやりやすいかということを作業療養士の方に聞いてみたのですが、やはり圧倒的に前提としてアクセスビリティが保証されている住宅の方が、医療・看護・介護が提供しやすいとのことでした。 fig10