スウェーデン『住み続ける』社会のデザイン(前編)

(4) 高齢者や障害のある人が住み続けるための仕組み

 スウェーデンでは、1987年に建築法と都市計画法が計画建築法として一本化されましたが、建築法の1977年改正による高齢者・障害者のアクセスビリティ義務付けは、計画建築法に引き継がれています。計画建築法の2010年改正では、移動および方向認知能力に障害が生じている人のためのアクセスビリティ及びユーザビリティの義務付けと、その基準が位置づけられています。さらに日本での施行令に該当する、建築規制により、基準の詳細な内容が記載されています。1977年の段階では、住宅内部のアクセスビリティ保証やバリアフリー化に限定したものでしたが、現在では公共の場にも適用できるような内容になっています。
 平屋の個人住宅のアクセシビリティとユーザビリティの基準の中で、スウェーデンで多くの高齢者住宅ケアワーカーや介護の現場が、住環境として非常に重要なポイントであると言われている点が、
「1ヶ所のサニタリールーム(洗面所・シャワーやバスタブ・トイレが設置された部屋)は、移動障害者でも利用可能であるように整備されなければならないと同時に、介助者にとっても介護動作が適切に行える配慮がなされてなければならない」
ということです。そして多くのケアワーカーの方がこの状況が満たされていれば一般住宅でも、終末期を迎えることは可能であろうということをおっしゃっています。
 図2は2012年に見学した、当時ちょうど売り出し中でまだ住んでいる人がいない集合住宅です。一般市民向けの住宅ですが、6m²とかなり大きいサニタリールームが設けられています。図3は、ベッドルームから直接シャワールームに入れるという、一種の流行だったつくりですが、これは重い寝たきりの状況になっても、天井走行リフトを作ればベッドから入浴できるし、さらに仕切りの壁も取ってしまうととても広いサニタリールームになります。このように一般の住宅供給においても、重篤な状態になっても居住継続が図られるようなプランニングが規定されています。 fig4 fig5