松村:
最近のDIYの動向についてお話を伺いたく、(社)日本DIY協会から馬渕さんをご紹介頂きました。先日のNHKの趣味講座でもDIYを取り上げていました。これはDIYが社会的な広がりを見せてきた一つの証かと思います。馬渕さんはDIYアドバイザーの資格を持っていらっしゃると伺いましたので、まずはこの資格について伺いたいと思います。
馬渕:
馬渕良二さん
DIYアドバイザーに関する資格認定制度は1983年から始まりました。当初は通産大臣(現在の経産大臣)の認定資格でしたが、当初から試験の実施機関であった(社)日本DIY協会に程なくこの業務を委託されまして、それ以来、本協会によって資格認定が行われています(
http://www.DIY.or.jp/
)。受験資格は18歳以上の方ならどなたでも挑戦できます。あえて必修条件といえばDIYが大好きということ。
毎年一回の試験があります。一次試験は学科、二次試験は実技及び面接が行なわれます。私は1987年に資格を取りました。建築士などの試験と違うのは、専門性は高くなくても、DIY関連用品部材の選択や道工具の使用方法から始まり、住宅建築や住宅設備の構造機能の基礎知識まで、あらゆる幅広い知識が問われることですね。例えば、接着剤一つを取っても、ホームセンター(以下HC)へ行くと、その選択肢が非常に広くて消費者は戸惑うばかりですよね。そんな時「○○と△△を接着したいのだけれど‥‥‥‥」と咄嗟に適切なアドバイスが求められます。こういう時こそ自分で試行錯誤を繰り返した実力が問われることになります。要するに自分の体験がものをいうと言いましょうか。
松村:
馬渕さんご自身がこの資格を取られたきっかけは何ですか。
馬渕:
私はもともとゼネコンの建築設備屋だったんです。永年現場に出ていたお陰で色んな職方さん達の技をつぶさに見る環境に恵まれておりましたことと、もともとこういう事をやるのが嫌いじゃないものですから、いつの間にか多少のことは見よう見真似で体得するようになりまして、気が付いたら身の回りの日曜大工のような事に活かしながらこつこつとやり始めていました。そんなところから素地が芽生えていたのでしょう。
この資格を取得しようと思ったのは、そんな自分流の実力試しのつもりがありまして、きっかっけといいますには至って単純なものでした。
どうも前振りが長くなりましたが、この資格試験の設問内容はなかなか微妙にひねったところがありまして、常日頃から何かしらモノをいじくっていない方は二次試験の実務部門ではご苦労なさってるみたいですね。
私の経験では「ハンダ付け作業」が出題されました。試験場の作業台の上には電気鏝と糸ハンダ、銅片が2枚、それにサンドペーパー、ペーストとかが準備されています。その他にも紛らわしいように全く関係のない様なドライバーとかハンマーなどの小道具も並べられていたような気もします。それらの中から必要なものを適切に使って2枚の銅片をハンダでくっ付ける仕草を採点されるのです。
普段私などは自己流で、まずは熱せられた鏝先で溶かしたハンダをちょいと掬ってそのまま銅線の接着部に持っていって鏝先でごしごしハンダをなすくって「ハイおわり」でやってましたが、これでは間違いなく失点です。正しくは、まず鏝でハンダの融点まで銅片を加熱しておいて、銅片が熱せられたところへハンダを盛っていくと自然にハンダは流れ込んでいく。これが正しいハンダ付けの方法なのですね。
要するに作業のプロセスをよく理解していないと人様に教える事が出来ないということを試されている訳です。当時はこの程度の実地試験をやらされましたが、今はもっとハイレベルなことをやっているんでしょうね、早く受けといてよかった(笑い)。
鈴木:
当然木工の試験もありますよね。
馬渕:
当然、木工もあります。材木の切り口を見て年輪の寄り方からどちらが北向きだったかとか、木板の裏表はどちらだとか、乾燥した時の反る側を判断しなさいとか。
あるいは玄翁で叩いて鉋の刃の出し方、納め方をやらせてみる、などもあります。
水道の蛇口のパッキンの交換などもありました。ここでクイズ、皆さんなら何から始めますか?正解は「最初に水道管の元栓を閉める」なんです(笑い)。そうですよね、元栓を締めないと水が吹いてしまいますものね。
この様に何が出てくるか解りません、「出題の傾向と対策」なんてないのですから‥‥‥‥。問題を作る方はさぞかし楽しいでしょうね。
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