講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



2.アドバイザー会で切磋琢磨
松村:  資格を取られてから、DIYをされるようになったのでしょうか。
馬渕:  私の場合は先ほどお話しましたように、それ以前からちょこまかとやっておりました。ただ、今から振りかえってみると、かなり遠回りな事をしていたんだなあ、が実感です。

資格を取ったおかげで仲間との交流の場がひらけました。銀行員、商社マンとか航空機のパイロット、或いは高校で教鞭を執っておられる方などなど、色々なジャンルの方たちと知り合いになれました。中には、指物師とか木工家具職人、材木屋さん、電動工具メーカーのデモンストレーター等、その筋の神様のような方々の多彩な顔ぶれです。これらのお仲間はかけがいのない私の生涯の宝物ですね。現役時代は異業種の方達との交流は殆どありませんでした。酒呑むのも会社の同僚ばかり。出る話は仕事の愚痴ばかりでした。それが今では新しい仲間のそれぞれが持っておられるノウハウを、お酒を呑み交歓しながらも、ちゃっかりと頂いちゃったりもしますし、逆に私の持っているようなものでもたまにはお役に立てる事もあるんです。

どなたでもそうでしょうけど、とかく自分の持てる特技を御披露したくなるものですね。ですから聞けば皆さん惜しみなく教えて下さいます。ところがですね、そのくせ教えてくれってなかなか言わない。要するに人に教えを請わない、持論を曲げない。頑固というのか何かつまらないプライドがあるんでしょうか。もっとも、人に言わせますと、私もその類のようです。

名人といわれる様な方にもそれなりにクセがおありでして、こちらの方もある程度経験を積んでくると、中には「こりゃ参ったな、とても乗っちゃいけないよ」なんてこともありますものね。私たちは先ほども申しましたように皆様に正しいプロセスに則って適切な指導・アドバイスをしなくてはならない責務がありますから余りな曲芸をご披露するわけにはいきません。
松村:  いわば親方の自己流だったりするわけですね。
馬渕:  そうなんですよ。
松村:  どういう機会にDIY仲間が集まるのですか。場所も必要かと思いますが…。
馬渕:  以前はアドバイザー会という全国ネットでのアドバイザー有志の自主運営サークルがありまして、機関紙を出したり、メーカー研修を主催したりと活発な活動をしていました。しかし、財政面その他諸々の事情で主管が協会に移った際に、発展的解散ということになってしまいました。今では協会主導型になっておりますが、以来、特に遠方に散開している仲間達の顔を見る機会が無くなってしまいました。そんなことから東京近在の有志だけで、この指とまれ的な人寄せを行い、月例の集まりの席を設けて、お互いが講師役になってテーマを持ち寄り自主研修のような事を始めております。みんな金も無い場所も無いということで、協会のご好意で会議室をお借りして集まっております。地べたさえあれば会議室のひとつ位建てるくらいはお手のもののはずですがね。
松村:  その会にお集まりになるのは、ほとんどが男性ですか。
馬渕:  大半は男性ですけれども、最近は女性も増えてきています。30名前後のなかで6、7人はおりますね。自営の方、HCにお勤めの方、百貨店にお勤めの方、専業主婦をしている方もおられます。美大やデザイン学校の造形や工芸を専攻し、インテリアコーディネータの資格も持ってその方面で活躍されている方もおります。

例会もさることながら、アフター5からの反省会と称する飲み会の方も盛り上がり、精勤賞を差し上げたいくらいの女性が沢山おられますよ。
松村:  かつては一線を離れて時間にゆとりができた方が多かったと思いますが、今では年齢層も幅広いようですね。お仲間やそういう集会に集まる方々がDIYを始められるきっかけは何でしょうか。一つには、自分でやりたいことが具体的にあった場合が想像できます。また、とにかく好きだから趣味として始められたという方もいるかと思いますが…。
馬渕:  おっしゃるように、たしかに最近は年齢の巾も拡がり女性の進出も際立っております。果たしてアドバイザーってプロなの、アマチュアなのと仲間で議論になる事もありますが、例えば内装関係や設備業を生業にしている人が、もっと多面的に技術を研鑽して仕事につなげたい為にこの資格に挑戦したと言うケースも多く見られます。

また、協会としては特別な指導教育は行っていませんが、加盟会員社のメーカーさんのトレーナーによる専門的な技術研修の受講の機会を頂いております。
鈴木:  そういった研修に集まる方々はアドバイザーですかそれとも素人ですか
馬渕:  当然アドバイザーを対象とした研修会です。よりハイレベルな知識を我々にも理解しやすい様に噛み砕いた懇切な実習を伴った講習をやってくださいます。

また、我々も講師となって、地域住民の方を対象に公民館などをお借りして「住まいのお手入れ教室」とか「高齢者のためのリフォーム教室」、あるいは夏休みを狙っての「小学生の為の木工教室」などのボランティア活動もおこなっております。
松村:  アドバイザーの中には、仕事との関係でやっているという方と、ご自身の高度なレベルでの趣味としてアドバイザーをなさっている方と、両方いらっしゃるということですね。
馬渕:  余り意識はしていませんがそうかもしれませんね。


前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP