講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8. 金沢から世界と繋がっていく
松村:  本格的な金沢の街歩きは初めてでしたが、やはりポテンシャルの高い街ですね。物語や歴史の幅があります。これから小津さんとしては金沢でどのような活動をしたいと考えていますか?
小津:  金沢の仕事に取り組みながら、東京を経由せずに他の地方や世界と繋がっていければと考えています。21世紀美術館があるので、工芸分野は世界と直接繋がっている感じがある。でも金沢くらいの都市は、日本の中ではちょっと埋没してしまうというか、建築や不動産の分野ではなかなか難しい規模なんです。もっともヨーロッパなら人口46万人は大都市ですから、十分な文化があれば世界の各都市と繋がっていけるようにも思うんです。
鈴木:  確かに金沢には様々な時代の空間資源がありますね。今日案内してもらっただけでも、戦前からの町家もあれば洋館もある。その一方で、戦後に立った商業ビルなどもあって、リノベーションのターゲットが一通り揃っていたという印象です。
小津:  先日受けたインタビューで金沢らしさの表現について聞かれ、「金沢らしさを考えないようにしている」と答えました。意識したらステレオタイプな表層的な記号になってしまうので、あくまで敷地と周辺コンテクストにフォーカスを絞ってデザインすることを心がけています。もちろん、目に映る分かりやすいコンテクストがあるとは限りません。最近は高岡市や福井市のエリア・リノベーションにも関わっています。両方とも戦前のコンテクストを戦災で失っていて、福井市は終戦直後に震災を被っていたりします。それでも、人の歴史などを掘り下げることによって、場所の記憶を読み解いていけるのではないかと考えています。



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