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小津: |
八百萬本舗は町家のリノベーションです。建物オーナーは金物屋を営んでいましたが、家業の後継者はいません。土地建物の相続に向けて壊すか改修するか相談を受けたことがきっかけで、設計だけでなく運営・管理までE.N.N.で引き受けることになりました。ここは茶屋街に向かう観光客が行き来する場所になります。石川県の食材や雑貨を扱う店舗に適していますが、1つのテナントが使うには大きすぎます。そこで百貨店と同様の契約方式を作り、6つのお店に出店してもらいました。どのお店も出店は初めてになります。2階の座敷は、お客さんの休憩所として開放していますが、地元の人が借りて習い事の教室などにも使えるようなコミュニティのレンタルスペースとしています。
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松村: |
改修のポイントはどの辺りになりますか?
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小津: |
大きな変更箇所は、1階の構造補強の壁や柱の追加と2階へ向かう螺旋階段の新設ですね。店舗と一体になっている土蔵には、排煙採光設備のトップライト以外には、ほとんど手を加えていません。実はこの建物の下を用水が流れているんですよ。現在は金沢市の所有になっていて九人橋川という用水ですが、かつての東内惣構堀の遺構です。ですから法的な大規模修繕に取り組むと、用水の部分を金沢市に明け渡すことになり、状態の良い金澤町家が無残な姿になってしまいます。そこで金沢市とも協議して、一部の改修に止めました。

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