講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6. 金澤町家などの活用
佐藤:  金沢市は昭和25年以前に建設された木造住宅を「金澤町家」と総称して、その保存や利活用に取り組んでいますよね。
小津:  僕たちも主計町茶屋街の町家を活用して「流寓」というフレンチ・レストランを展開しています。縁あってその隣の町家も借りています。2008年の浅野川氾濫によって主計町茶屋街は床上浸水しましたが、それがきっかけで何人かの住人が町家を手放したんです。もっとも、この建物は金沢市の補助金を受けて金澤町家として改修されたものなんです。当面は手を加えられないので、これから展開する予定の分散型の商業施設の1つとして使うつもりです。
その拠点は主計町から400mほど南にある洋館を考えています。ドイツ留学経験のある医師が昭和10年頃に建てた建物で、金沢市の登録文化財になってもおかしくない立派なものですが、継承した子孫の方が指定を断ってきたので登録されていません。外装改修には極力オリジナル部材を使うつもりですが、瓦の色が景観条例の指定色から外れているので対応を思案中です。購入当初は、「まちやど」の拠点としての利用を検討していましたが、現在はコンセプト主導型の「商業テナント」の活用も含めた検討を進めています。
松村:  よく購入できましたね、まちやどという事業に融資する金融機関があるとは思えませんけど(笑い)。
小津:  前々からこの洋館を活用したいと思っていたら、この建物が売りに出たんです。放っておいたら土地だけ欲しい不動産業者が購入して、駐車場などにしてしまうのは明らかです。でも自ら入札に参加しようにも金銭的に厳しい。そういう問題意識をSNSで発信していたら、それを読んでいた人が不動産投資家を紹介してくれた。その方は不動産投資も手がけてきた呉服屋の旦那さんで、「あの洋館が残るなら買取りましょう」と言って下さいました。





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