 |
 |
 |
西村: |
織機の分解を2007年の8 月頃まで行った後は、機械油がこびりつく床を磨いていきました。
|
 |
石井: |
布で擦っていくと、固まっていた油が溶けてきたり、中から糸くずが出てきたりします。宝石の琥珀には昆虫や植物が閉じ込められていますが、床にこびりついた機械油も色々なものを溜め込んでいました。そうした痕跡を磨きながら山治織物工場という場を読み解いていきました。
|
 |
山ア: |
織り子さんたちはタイヤ底の草履を使っていたんですよ。油の飛び散った床をそうした草履で歩き回っていた頃は、床がテカテカ光っていました。こうした時期が結構長かったので、私はその跡が現れてくるのかなと思って見ていました。
|
 |
西村: |
2007年はそのように僕達が磨いた床そのものと、分解した機械の部品を別の作家さんが布に拓本した作品を展示しました。さらに2008年の夏は、床に染み込んだ機械油を剥ぎました。機械油から出る匂いが操業時代の痕跡のように残っていましたが、油を剥がすと工場内の匂いが変わっていく。ですから油を剥がすという作業は、工場の空気を洗う行為になっていて、この時はそうした行為を通して過去を解放していったんだと思います。
|
 |