講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


9.移住者と地域との関係
松村:  移住してきた人は定着していますか。
大南:  9割以上が定着していると思います。入ってくる時の優遇がないこともあって、神山には自分で生きていける若者が来ているからだと思います。外に出ていった若者がUターンする動きも少し生まれています。
松村:  子供連れの家族も移住してきているんでしょうか。
大南:  保育所も移住してきた方の子供の方が多くなりました。
鈴木:  田舎暮らしは忙しいというお話がありましたが、移住者も地域の活動に参加しないと馴染んでいけませんよね。移住促進の取り組みによっては、お祭りなどへの参加を義務付けているところもあると聞いています。
大南:  グリーンバレーの中には、移住を中心に動いてくれる人間が何人かいます。移住希望者がいても、そうした仲介者がやんわりと止めたりする場合もあります。「住んでいるのは高齢者ばかりだから、香典がかさむぞ。1年間くらい様子を見てみたらどうだ」とか言って(笑い)。
鈴木:  移住の手続きはWebだけじゃなくて、そうした仲介者がいるんですね。
大南:  田舎の近所づきあいに対する向き不向きはありますからね。もっとも、神山では入口は厳しいけど、移住後の縛りは緩やかです。地方移住の多くは逆になっていて、誰が来てもいいけど、「これこれは絶対にやらなければならない」という掟を設けています。受け入れ側は多くを望んでいるつもりはないと思いますが、その決まり事はガチガチだったりする。
松村:  神山では、例えばパンさえ作ってくれていたら、お祭りに参加しなくてもいいわけですか。
大南:  移住者が村の祭りを見て「自分が手伝わなかったら、村の祭りがなくなってしまう」と感じてくれれば本物なわけですよ。自発的な心の動きですから。ところが義務として課されたら負担になりますよね。
松村:  各自の自発性に期待するのは、組織運営としては難しくありませんか。
大南:  受け入れる方が変われるかどうかだと思います。生物の適者生存と同じようなことです。それまでの強者がずっと生き残るわけじゃない。昔からある地域の決まり事を押し付けても、短期間なら残るかもしれないけど永続きはしませんよ。永続きさせようと思ったら、自分たちも変わらないといけないと考えています。



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