講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.空き家をいかに掘り起こすか
嵩 :  空き家の掘り起こしは移住者支援の大きな課題です。移住希望者の6割以上は賃貸物件を希望し、なかでも空き家の一戸建てに住みたいと考えています。一方、空き家のオーナーは売りたいと考えている。例えばふるさと回帰支援センターで2011年に長野・新潟・山梨・和歌山で行ったアンケート調査でも、空き家の維持費用を捻出できないという理由で売却の意向を持っている方が圧倒的に多いんです。こうした状況の中、既に355の自治体で空き家の適正管理条例が制定されています。
松村:  355自治体のうち177自治体が行政代執行を条文に記載しているんですか。もし実行されたら、行政が私権に立ち入った上に、後から解体費用を請求してくるわけですよね。
嵩 :  空き家の適正管理条例による行政代執行を行った最初の事例は秋田県の大仙市だったと思います。雪国では空き家が通学路に倒れるおそれがあったりするので、取り壊しに踏み切ったようです。もちろん首都圏などでも行われていますが、いずれにしても行政が「危険」と見なした物件は取り壊すことが法的に可能になっています。
ただ自治体によっては、固定資産税の納税通知書を送る際、空き家バンクへの登録を呼びかけていたりしています。そうすると、少なくとも年に1回は空き家のことを考えるきっかけが生まれます。適正管理条例をつくった自治体は、概ねこうした取り組みもしていて、空き家バンクへの相談も増えているそうです。
松村:  皆さんいろいろやっているんですね。
嵩 :  次の国会で「空き家等対策の推進に関する特別措置法」ができる見込みです。この法案が成立すると、市町村が空き家に立ち入ることが可能になったり、税務課が持っている固定資産税の情報を他の部局でも使えるようになったります。そうすると、優良な住宅ストックを活用する仕組みも整っていくと思います。





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