地域住宅団地再生事業に関する勉強会

5) 住宅団地再生に係わる取組みに対する支援

①住宅市街地総合整備事業等
 国交通省が用意している住宅団地再生の支援措置には、住宅市街地総合整備事業 (住宅団地ストック型) があります。ハード面では、住宅団地内での高齢者支援施設や子育て支援施設、コミュニティスペースなどの整備に対する国費補助が設けられています。ソフト面では、整備計画策定や協議会活動等を支援する国費補助が設けられています。そして、地域住宅再生事業の実施区域では、対象住宅団地の要件が緩和されます。
 住宅市街地総合整備事業の他、国土交通省では空き家活用や、地域交通の再編・維持に対する補助を用意しています。
③地方創生関係交付金
 国交省が用意している補助金・交付金は、今申し上げたように、補助対象となるメニュー・要件が決まっています。それに対して、内閣府の地方創生関係交付金は、自治体が地域再生の絵を描いて、採択されればソフト・ハード両面で様々なことに交付金が使えるという、自由度の高いものです。
③企業版ふるさと納税
 企業版ふるさと納税は、自治体が行う地域再生のプロジェクトに企業がお金を寄付するとその9割の税額控除が受けられるというものです。これまで住宅団地再生に使われた事例はあまりないと思いますが、場合によっては使えるツールだと思います。三木市では、ホームページで住宅団地再生の取組に対する企業版ふるさと納税の寄付の募集を行っておられました。
④地域活性化伝道師<
 以上はお金の面での支援が中心ですが、専門家によるノウハウ提供も必要と考えております。自治体や地元にヒアリングさせていただきますと、何かやりたいとは思っているけれども、実際に形にするプロセスで困っていらっしゃる方が多いという印象を受けました。そこは行政も苦手としている分野で、地域活性化伝道師として専門家を派遣し、指導・助言などを行っていただく制度を設けています。
⑤ハンズオン支援
 地域住宅団地再生事業の創設時に、内閣府では、住宅団地の再生に関する政府支援を希望する自治体を募集し、7自治体を採択しました。何を支援するかは全く決まっていないのですが、各自治体から様々な相談を受けて、内閣府でできることがあればお手伝いさせていただくというものになっています。実際に何をやるかは団地毎のオーダーメイドになりますが、内閣府として各省庁へのつなぎ役や補助金・制度の紹介、専門家紹介などが考えられます。
 採択した自治体の1つである盛岡市の松園団地では、ハンズオン支援への応募が、地元の方々によるワークショップ開催や交流活性化などの盛り上げのきっかけになったと伺っております。この支援が、地元の盛り上げへのきっかけになったのであれば、担当としても大変うれしいことです。

6) 住宅団地再生への行政の関わり方に関する私の感想

 内閣府の2年間、住宅団地に関わらせていただきましたが、住宅団地再生の難しさを感じました。難しさの1つは、住宅団地再生は総合的で、形の定まっていないテーマであり、どこから取りかかるべきかが見えにくいところがあります。さらに明確な管理主体のいない戸建て住宅団地における、再生の担い手はだれで、行政としてどの点に関わることができるかということがあります。地元が主体的に動いて、行政がバックアップしていくために、行政に何か求められているのかアドバイスをいただきたいなと考えています。地元に再生への思いを抱いている方はたくさんいると思います。実際に動き出すきっかけづくりと、動き出したものを持続させるところの、行政の関わり方が頭を悩ませたところです。
 特に国は現場から遠いところにあり、地域の実態を知るにはヒアリングがせいぜいで、現場で何が起きているかを把握できていないところがあります。一方で、自治体に何ができるかにも頭を悩ませました。行政は仕組みのしっかりした組織であり、明確なテーマ・方向性があれば動きやすいのですが、住宅団地再生は不明確で抽象的なお話になりがちです。具体の事業段階・制度的課題までたどり着いていれば自治体は動きやすいのですが、その前の何を行うか検討・準備する段階が住宅団地再生では重要で、自治体にもそこに悩んでいる方が多くおられました。その部分は行政による支援がしづらい分野であり、ちょっとした調査費用の補助や、専門家派遣を行っている自治体はありますが、それ以外に自治体が何をできるのかということがあります。
 さらに、政策課題としての住宅団地再生は、たくさん存在する政策課題の中でどれくらいの優先順位にあるのかが難しい。これは、住宅団地の行政区域内でのプレゼンスなどにより、自治体によっても温度差があります。行政は公平性が求められる立場にありますが、住宅団地に着目する理由について万人が納得する説明ができるのであれば、動ける自治体も増えてくるのかなと考えています。
 行政の縦割りも課題です。よく言われるように、行政は、部門間連携を本当に苦手としています。そういう意味で住宅団地再生のような総合的なテーマは、行政の苦手とするところではありますが、その部分に総合的調整を行う内閣府の役割もあると考えております。
 さらに、住宅団地再生には継続性が重要ですが、行政では人事異動があります。担当者が変わったために取組みが継続しなくなったということが無いようにする必要があります。
 以上、行政内部でも何とかしようと頭を悩ませた課題ですが、皆様からのアドバイスをいただければと思います。