地域住宅団地再生事業に関する勉強会

2) 住宅団地の課題と地域住宅団地再生事業創設

 まず、地域住宅団地再生事業創設の経緯からご説明申し上げます。平成30年に国交省で全国都道府県を対象にした住宅団地の調査を行いました。住宅団地の定義を5ha以上の面積で計画的に開発されたものとして、各都道府県に抽出していただいた結果、全国で3,000もの住宅団地のあることが分かりました。三大都市圏郊外部の住宅団地が多くなっていますが、全ての都道府県に住宅団地が存在します。供給時期は1970年代前半がピークとなり、その前後の1960年代から70年代に多くの住宅団地が供給されています。一方で1990年代、2000年代になってからの、住宅団地の新しい供給もなされております。
 住宅団地の課題で一番に挙げられるものは高齢化です。開発後30年以上経過した住宅団地では、全国平均をはるかに上回る高齢化が進んでいます。
 住宅団地には、戸建て住宅団地や、公営住宅団地、公社住宅団地、UR団地などがありますが、団地内住宅の過半数が戸建て住宅という団地が約7割を占めています。また、団地の8割は、公営公社やURによる公的賃貸住宅を含んでいません。公社やURのようなところが管理主体となっている団地は比較的手をいれやすいのですが、民間が開発分譲した戸建て住宅団地の再生をどのように進めて行くかが、制度をつくる上での課題意識でした。そのツールの1つとして創設したものが地域住宅団地再生事業です。
 また、市町村を対象にした調査で、およそ6割の市町村が住宅団地についての問題意識を持っていますが、具体的な取組みを行っているところは2割ぐらいということも分かりました。この差をどう埋めていくかが我々の課題でもありました。
 住宅団地の課題として話題に上る1つは用途地域です。多くの住宅団地は住居専用地域として、建物用途を主に住宅に制限する規制がかかっています。これはもともと良い住環境を守るためでした。しかし高齢化や空き家発生が進む一方で、店舗立地ができないといった、現在の状況に住宅団地が対応する上での障害となっています。これまでは都心に仕事があり、郊外に住宅があるということで、用途を純化していくことが善だという価値観があったかと思います。しかし現在は、多様性が1つのキーワードになり、用途的にも多様化していき、居住者の世代なども多様化していくことが求められているかと思います。そのためにどのような仕組みが必要かを検討し、地域住宅団地再生事業を創設しました。

3) 地域住宅団地再生事業の内容

 地域住宅団地再生事業のキャッチフレーズは『高度成長期型のまちから、多世代・多機能のまちへの転換』です。住宅団地に生活利便施設や就業の場等の多様な機能を導入することで、幅広い世代が安心して住み、働き、交流できる場として再生するものです。 具体には、市町村が区域を定め、多様な主体と連携して総合的な事業計画をつくることで、住宅団地再生に必要な各種行政手続きがワンストップで行われます。用途規制の緩和や都市計画変更、乗合タクシー・コミュニティバス、共同宅配、有料老人ホーム、介護事業など、個別に許認可を行うのではなく、ワンストップ化する。それによって住宅団地再生を円滑に進めるという制度です。
 さらに、URは自身が管理する住宅団地の再生に取り組んでおり、URが地方自治体の委託を受けてノウハウを提供していくということができる仕組みにしています。
 行政手続きが円滑に進むことだけで住宅団地再生の色々な取組みが進むということではないと思います。ただ、自治体が住宅団地再生に取組むきっかけがないということがあり、この制度を“てこ”にして取組を始めていただきたいという思いがありました。
 また、これは行政側のお話になりますが、住宅団地再生に行政が取り組もうとすると、他の地域もある中で何故住宅団地だけにてこ入れするのだと問われることになります。これは説明が難しいところで、住宅団地に様々な課題が先端的に起きているとは言え、それは他の地域においても発生している課題です。この制度は、地域を指定して進めて行くものですので、認定を国から得たということが、その地域で取組みを進めるための説明材料になると考えられます。
 この制度の施行は2年前ですが、第1号として埼玉県の東小川住宅団地が認定されました。地域再生協議会による事業計画が先週出来上がったばかりのところです。

4) 参考事例

 地域住宅再生事業がどういった取り組みを参考にしたのかという事例を紹介いたします。
 北海道東北広島市の北広島団地は分譲戸建てを中心とした、北海道でも有数の大規模団地ですが、高齢化率が約50%まで進んでいます。継続して住み続けられ、若い世代を呼び込む住宅団地に再生するために、用途地域変更による店舗誘導、公共交通の再整備と利用促進、小学校跡地を利用した介護事業所やサ高住の導入、協議会による住み替え支援活動などが進められています。内閣府は地方創生推進交付金による支援を行ってまいりましたが、まさにこのような取組みが円滑に進むことが、地域住宅団地再生事業創設の狙いです。
 兵庫県三木市で大和ハウス様が取り組まれている緑が丘地区も参考にさせていただいています。