住宅セーフティネット法の改正と身元保証サービス

 住団連 成熟社会居委員会 講演より

 

2) 身元保証サポートの課題

 信頼できる身元保証人事業者を選ぶ上で確認すべきポイントは、預託金の管理方法、解約時の返金ルール、重要事項説明書の有無、遺贈寄付が条件となっていないか、成年後見制度の理解と経験値です。
 国は、身元保証や死後事務等を行う事業者の増加に対応して、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を令和6年6月に策定しました。これは民事法や社会保障関係法などに広くまたがる法律上の規定や留意すべき事項等を、関係省庁横断で整理したものです。
 また各自治体は、組織運営、契約締結・履行、サービス管理のチェックにもとづくなど、身元保証の事業者の認証制度を設けるようになりました。
 そして国は令和5年度から、成年後見人制度をさらに使いやすくするための、制度見直しに関する検討を行っています。
 身元保証人だけで解決しない場合に対応するためには、成年後見人制度を押さえておくことが大切です。しかし、現制度では成年後見人を一度決めてしまうと、判断能力が回復しない限り利用をやめることができない、本人の自己決定が必要以上に制限される場合がある、本人がニーズに合った保護を受けることができないといった“使いにくさ”が課題と考えられます。また、本人の判断能力が低下した後も適切な時期に任意後見監督人の選任申立てがなされず、任意後見契約の効力が生じないケースがあります。
 成年後見人制度をより使いやすくする検討がこれからの課題となっています。

【成年後見制度】
法定後見制度:本人の判断能力が不十分になった後に、本人の判断能力に応じて家庭裁判所により選任された①成年後見人、②保佐人又は③補助人が本人を保護、支援する制度
任意後見制度:本人が十分な判断能力を有する時に、任意後見人や委任する事務を契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が任意後見監督人の監督を受けつつ事務を行う制度

【質疑応答・意見交換】

成熟社会居住委員:身元保証サポート事業利用者の年齢層はおいくつくらいですか。
谷川代表理事:50代から90代です。70代から80代がボリュームゾーンで、平均は70代後半になると思います。50代の利用も珍しくありません。若年層化は進んでおり、親族との縁が切れた40代の方からお問い合わせもあります。入院などで一度保証人になってもらうと、二度三度の保証人は頼みにくいということもあるようです。
成熟社会居住委員:御社は公益社団法人とのことですが、会員企業の会費をもとに、御社の事業が進められているのですか。スタッフはどれくらいの人数がおられますか。
谷川代表理事:従業員は約80名です。関東圏に約50名、関西圏に約10名、他の拠点に3〜4名が在籍しています。従業員数は利用者様の数に応じています。弊社は公益社団法人ですが、運営スタイルは通常のサービス事業者と同じで、会員企業の会費ではなく、利用者様の契約金で運営しております。
成熟社会居住委員:スタッフに必要なスキルはどのようなものですか。ルーチン化された業務はございますか。
谷川代表理事:営業部門と生活支援の部門で異なります。生活支援には、介護士や社会福祉士、精神保健福祉士や、介護事業所で働いていた者などが携わっています。営業は、一般のサービス事業で働いていた者が携わっています。ルーチンの業務としては月1回の電話での安否確認が行われていますが、いざという時、あるいは亡くなられた時に対応する業務が主です。
成熟社会居住委員:依頼者の資産状況について線引きはありますか。利用者が清算できず、御社の持ち出しになってしまうようなケースはありますか。持ち出しに備えて、遺贈金を受けておくようなことは考えられますか。
谷川代表理事:資産いくらという明確な基準はありません。長期的なお支払いができる方であれば契約できます。資産の余力がない方でも利用できるようなメニュを考えているところです。弊社の持ち出しになるようなケースはこれまでありません。預り金が足りずに、弊社が一時的に立て替えるケースはありましたが、相続人に補填いただいています。そのため遺贈金は受けない方針です。成年後見と信託を組み合わせるやり方もあります。遺贈金を受けて持ち出しに備えている事業者もあることはうかがっています。
以上