幸福度No.1 デンマークでの楽しい毎日

成熟した社会デンマークでの幸福を感じる生活のあり方

 

(6)質疑応答

成熟研委員:こうした高齢者住宅は新築によるものでしょうか。
山下:新築です。まちなかにはあまり土地がなく、こうした立地に施設が新築されています。

成熟研委員:デンマークのGDPの高さは、どのような主力産業によるものでしょうか。
山下:農業・畜産業が主力(※1)のようです。
(※1:デンマークの農業は最新農業技術の普及や高度な農業教育により国際競争力が向上されているようですが、主力産業は「流通・運輸、製造、不動産、ビジネスサービス」であることを追加させて頂きます。

出典:外務省のデンマーク基礎データ  http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/denmark/data.html
    国交省国土政策局「デンマークの経済社会について」http://www.mlit.go.jp/common/001036545.pdf)

デンマーク国内の豚の数は人間より多いと言われていて、日本にも輸出されています。最近は高度な技術を持った人材育成にも取り組んでいます。

成熟研委員:気候はどうでしょうか。大雪が降るようなことはありますか。
山下:冬は長いのですが、雪は思ったより降りませんでした。気候は、日本では軽井沢に近い印象です。

成熟研委員:日本でも無電柱化推進法案の審議が始まりました。写真を拝見すると、電柱が見られなかったのですが、デンマークでは電柱の地中埋設は進んでいるのでしょうか。
山下:郊外には電柱がありますが、まちなかでは地中化されています。

成熟研委員:移民は多いのでしょうか。
山下:移民は多いです。デンマークは税が高負担でも不満がでないのは、やがて自分たちに高福祉として帰ってくるからという理由があるのですが、移民が多くなるとそちらに税金が回るため、国民から不満がでてきます。すると次の選挙で、投票が少し右寄りに振れるということがあります。デンマークは自国への誇りが高く、EUには入っていますが、ユーロ通貨には入っておらず、独自の通貨(クローネ)体制をとっています。

成熟研委員:世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数において、2014年の日本は142か国中104位で、先進国としてありえないことと言われています。デンマークは5位でした。日本とデンマークの両方でお仕事をされていたとのことですが、男女共同参画の問題についてなにかお気づきになったことはありますか。
山下:デンマークでは男女に限らず、皆平等だと思います。年下だから、目上だからということもありません。子どもを産んでから働いている女性がとても多いのですが、子どものために早く帰るとか、子どもの誕生日に休みをとるといったことが、当たり前に受け入れられています。それは男性も同じです。夫婦とも正社員で働いているので、どちらかが早く帰って子どもをケアするということが当たり前になっています。デンマークでも第二次世界大戦前は、女性は家にいるという考え方が一般的だったが、戦後男性だけでは労働力が足りないため、女性が働くことが推奨されるようになったと伺っています。8割くらいの女性は普通に働いていると思います。

成熟研委員:日本のようなうつ病などはないでしょうか。
山下:“うつ”については日本より深刻で根深いと思います。冬が暗くて長いため、精神的にまいってしまう人がいるようです。紫外線を発する照明が売られています。ドラックやアルコール依存症も見られます。

成熟研委員:デンマークでは皆が自転車で通勤できるところで働いていておられるのですか。
山下:大抵は自転車かバスで通勤しています。コペンハーゲンは地下鉄があるので、地下鉄通勤もあるかもしれません。やはり自転車通勤が多いですね。デンマークの環境政策・エネルギー政策として、自転車が推奨されています。自転車通勤を競うようなコンテストが行われています。

成熟研:寒い国だから、1人で戸建に住むような住まい方は暖房のエネルギーコストが合理的でなく、家族の人員数が変わることが住み替えにつながるようなことはないでしょうか。また、デンマークでは大学の机上の空論よりも実学重視で、日本でいう実業学校に進む人が多く、日本のように高学歴をよしとする傾向はないと聞いたことがあるが、本当でしょうか。
山下:住み替えについては、ほぼ100%の子どもが18歳で独立して、親元から出てしまいます。親と同居というケースはほぼありません。高等教育を受ける人は国から奨学金をもらって、学生寮にはいったり、アパートをシェアしたりしています。結婚して子どもができると、緑の多い郊外の一軒家か長屋方式の家に住む人がいますが、子どもが独立すると、私が住んでいた家のように、一軒家の一部屋を貸すことも一般的です。デンマークでは家族が大切にされていて、クリスマスには子どもが親のところに帰ってくるため、子どもが独立した後も、一軒家をそのまま維持しているようです。年老いてそれが難しくなると、ヘルパーさんに来てもらって住み続けて、それもいよいよ難しくなると、さきほどご紹介したプライエムなどに住み替えることが一般的だと思います。まちなかのアパートにはエレベーターがなく、そうした建物の改築も法律で制限されているため、高齢者には住みにくいようです。高等教育の件ですが、デンマークでは資格がとても重視されていて、大学に行かなくても、他の教育を受けて資格を取るということが一般的です。例えば建築学校はデンマークには二つしかなく、どちらかを出なければ、デンマークでは建築家とは名乗れません。学歴によって人を差別するということはなく、皆平等で、どこの大学を出ているかと聞かれたことはありませんでした。

成熟研:デンマークに行かれたきっかけは何でしたか。
山下:日本で設計の仕事をしていたときは、お施主さんの要求通りに建てても、街並みにそぐわないという悩みがあり、色々な本を読んで、デンマークで勉強しようと決意しました。デンマークでは新しいものを建てるときに、必ず公聴会を開き、厳しいチェックが行われています。公聴会には自分の街がどうなるかに興味のある人が参加されています。

成熟研委員:デンマークは高福祉高負担だから、払っている税金の使い方について、コミューン単位でチェックがされているところがあるのではないでしょうか。建物をつくった後のパフォーマンスやコストのチェックが厳しくなされているのではないしょうか。
山下:デンマークでは役所がとても親切で、まちづくりや建物に関する情報を求めれば、すぐに応じてくださるところがありました。残念ながら、採算の悪い施設は閉鎖されるということも起きています。