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授業実践例
本校の和室の状況と課題
本校には、35畳の畳と水屋が付属した和室がある。総合的な学習で生け花やお茶、書道で使ったり、学級懇親会などPTAの会合で使用されたりしている。20分休憩や昼休みは、子どもの遊び場として開放され、囲碁・将棋、百人一首、カルタで遊んでいる。休憩時間の和室での使い方については、くつが散乱していたり百人一首や囲碁・将棋の用具が不足していたり、雨の日には、運動場が使えないために和室に座る場所もないくらい人が集中するなど使いにくい現状となってきている。一方、学校の施設の中で子どもに人気のある場所として和室は上位である。休憩時間の和室の使い方は生活指導上の問題でもあり、子どもが楽しんで使いやすい生活空間にしていくことが課題である。
▲和室出入り口
「和室から住まい方を考える」実践
本校の和室の問題点を家庭科学習で共通の生活課題として設定し、学校生活の生活空間である和室をどのように工夫すれば居心地のよい生活空間にしていけるかを考える学習の場にした。今までの「住まい方の工夫」の題材では、個々の家庭の住まい方や工夫を振り返り、提示することで工夫の仕方の違いや共通点を見つけて考え、再度個々の家庭生活を見直し家庭での住まい方を工夫し実践していった。家庭で実践したことを保護者からのコメントを通して評価し、その実践を交流し共有化することで次の実践意欲に繋げてきたのである。しかし、今回の実践「和室から住まい方を考える」では、和室がすべての家庭にある環境ではなく子どもの家庭生活の実態が必ずしも共有化できる題材ではなかった。
▲和室内部の様子
そこで、共通の課題として学校の和室を取り上げた。次に、和室のもつ問題点を生活課題としてとらえ使い方の工夫を考え実践していくことが、個々の家庭の住まい方を見つめ直すきっかけになり、家庭生活の実践意欲へと繋がると考えたのである。また、評価においても家庭での実践は見取りにくい領域でもあるので、学校教育の場で生活課題を解決し、生活空間を工夫しよりよい生活空間へと創っていく実践の場として学習環境を設定することで見取りやすくなると思った。子どもを取り巻く生活環境が目まぐるしく変化していく現状において、子どもの生活環境の実態をしっかり把握したうえで題材を設定し実践的な態度を育成していく場を家庭だけではなく、学校生活の場でも考え実践していく必要があると思う。
人と生活文化との関わりから「心の教育」を考える
本校では、6年生と1年生のペア活動が通年行われている。6年生が和室の生活課題を考える時に「ペアのA君」を意識して「和室に墨で書いた掛け軸や花を生けることでA君が落ち着いて和室で過ごすことができる。」「靴の置き場を作り、くつの整理整頓を工夫することで安心して和室を使うことができる。」など使い方の工夫を考える思考の流れの中に「だれかのために」、つまり人を意識しながら生活を工夫することが生活者として家族を意識しながら生活を工夫していく実践的な態度に繋がっていくものと考える。ペアの1年生が困っている和室の問題を6年生がより身近に考え問題意識を持って実践していくことで、その結果、1年生が喜ぶ顔を見て充実感や自己肯定感が生まれる。人のために役立つ実感を味わうことは、次の実践への意欲に繋がり生活をよりよく創っていくための生活者としての基本的な資質になるものと思う。「和室」は伝統的な日本の生活文化である。畳文化は、日本特有のもので畳の張り替えは日本独自の生活文化である。和室の良さは畳のい草のよい香りによるアロマテラピー的な癒しがある。和室の空間は、ほっとし落ち着く生活空間である。また、障子や襖を開閉することで部屋数が増えたり広くなったりする。畳の上に何も置かなければ就寝をしたりお茶会や生け花などが行えゆったりとした居心地のよい空間にもなる。机を置くと書道をしたり書き物をしたり食事の場やリビングの場になるなど多機能的に使える。洋室にはない心を癒す生活空間である。学校生活の中にこのような癒しの空間があることは大切であり開放されていることを生かして子どもが「ほっと落ち着く居場所」として今後大切に使っていきたいと思う。
住まい方の工夫から食文化へ
和室を過ごしやすい環境に整え、和室の心を癒す雰囲気と多機能的な空間を生かして和室を「会食の場」とした学習を設定した。本来「食べて集う」ことはその場を和ませ心も柔らかくする場である。さらに、1年生と6年生のペア活動を活用することで、ペアの1年生を意識し「人をもてなす」気持ちをより意識化させることができると考えた。6年生はすでに調理実習でお菓子づくりを行っている。今回は、今までの食の学習を生かし「会食」というより具体的な場面で食生活への関心を高め食に対する実践的な意欲へと繋げるよう学習環境を置いた。和室で行うことにより和室での食事のマナーも考えさせ、単に食べるだけではなく食文化として考える場としても考えさせた。事前に自分とペアの1年生のおやつの取り方の実態を調べ、自分と1年生との嗜好の違いや共通点を考えさせた。そこから、ある材料の中で工夫をして調理しもてなすことで人を意識しながら食を考えることの大切さに気づく機会としたかったからである。もてなした献立は、「お茶と白玉団子」である。お茶はお抹茶と煎茶を用意した。お抹茶は茶筅とおうすを用意してお茶を点てた。お抹茶と和菓子の組み合わせは、渋いお抹茶と甘い和菓子が口の中でほどよく融和しお互いの味が中和するため口当たりがよくなる。和室での伝統的な日本の食文化を味わってほしいと思い準備した。煎茶のお茶はお抹茶を飲んだあとのお口直しとして用意した。煎茶の入れ方もすでに学習しており、特に、今回は1年生がおやつを食べる時に一緒に飲むものでお茶が多かったのでお茶の温度やお茶を注ぐ時期などに気を配りながら6年生は用意をしていた。また、白玉団子は1年生の口の大きさに合わせ食べやすい大きさを考え調理していた。白玉団子が水っぽくならないように食べる直前にきな粉をかけて味がわるくならないように気をつけもてなした。和室の雰囲気も大切に考え、障子や襖を閉めて光が入らないようにして静かに落ち着く環境づくりを心がけていた。お抹茶の勧め方も1年生が飲みやすいように気配りしながら声をかけていねいにもてなしていた。
和室の落ち着く雰囲気を大切にしたお茶と和菓子によるもてなしは、家庭科で学習した基本的な食の学習を深化し食文化として高める学習である。この実践による学習から自分の食生活や家族との食事空間を見つめ、食を通して家族や人との繋がりを考え深めることは大切なことだと考える。自分を取り巻く人と物を有機的に繋げ生活に返し生活を総合化していくことが大切である。生活を総合化していく時に、人を意識した生活実践、つまり、生活を創っていくときに家族の思いや状況を考えながら生活を工夫していくことが生活者の基本的な資質であり、自分の家庭生活を取り巻く環境が変化していってもその状況をしっかり把握し問題点を考え生活課題を解決していく時に大切にしたい視点である。学校教育においては、学校生活の場面で人との関わりを意識させた学習環境づくりが今後の課題であろう。
▲ 和室でのおもてなしの準備
−白玉団子・お茶づくり
▲ 和室でのおもてなし
家庭科の学習では、家族を中心とした生活を創意工夫しよりよく豊かにしていくことを目標に実践的な態度を育てることに重点を置いている。生活への関心・意欲・態度、生活への知識・理解、生活の技能、生活の創意工夫の4観点を基礎基本の学力としている。この基礎基本の学力に人との関わりを通してどう生活を創っていくかが大切な視点である。
阪神大震災から10年が経つ。中越地震の震災にも見られるように生活の基盤は住まいである。ライフラインの整備も大切である。家族や人との繋がり、コミュニティも大切である。
生活空間に自分の安心して落ちつく居場所があることは人が生きていくうえで大切である。自分が落ちつく生活空間は、時には自分1人だけの居場所であることも必要であるが、同じ生活空間でコミュニケーションを図り生活を共有していく居場所も必要である。これを家庭生活に置き換えると個室と居間・食堂になる。
学校で実践し考えたことを再度自分の家庭生活に置き換え振り返る作業が必要である。居間・食堂の生活空間をほっとする落ちつく居場所としてどのように家族と関わり家族との生活を工夫して創っていくかを今後実践を通して考えていきたい。
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