トップページ 「まちと住まい」の実践事例 「集まって住まう」



 
   「住む」ということは、単に個人や家族の生活の本拠地としての住居ということだけでは完結しない。ガス、電気、上下水道、道路、鉄道、公共施設・・・。住んで生活することは、つねに住居の外側に広がっていかざるを得ないし、地域や自然環境といった、より大きな生活空間のなかに存在して機能しているものでもある。生活していく上で関わる人間関係も家族だけでなく、地域や社会の人間関係に組み込まれて成立している。空間や人間関係に留まらない。他にも歴史や技術、風土、地理などなどともつながる。まさに「住」は、複合的な諸要素からなる文化の総体を表現するとさえ言えるだろう。

  「文化の総体」を表現する「住」。その「住」を「学ぶ」対象として捉えたとき、そこに浮かび上がってくる視点は、モノ・コト・ひと、自然や社会、世界、歴史といった様々なる他者との「関わり」「関係性」というテーマである。現代社会の課題である環境問題ひとつをとっても、一人ひとりの「住む」という生活のしかたが地球環境と相互依存関係にあることはすでに自明であるし、さらに、「集まって住む」には、個としての「私のライフスタイル」と「コミュニティ」とをつなぐ「公共性」といった人と人との「関係性」の問題を避けて過ごすわけにはいかない。共に住むことを考えるプロセスには、また、共に学ぶ姿が垣間、見えてくる。これは、今日的教育のテーマである「共同的学びのあり様」とも優れてつながるだろう。そのような問題意識のもとに取り組んでみた題材が「集まって住まう」(前任校、中野区立上鷺宮小学校での99年度の実践)であった。
 



 人間の生活の営みを直接学びの対象にする家庭科は、子どもたちの生きている現在(いま)と子ども自らの理(ことわり)の世界から学びを立ち上げ、子どもたちの学びの状況に応じて意味ある学びの活動と経験を組織しながら授業がつくられていくという側面が強い。今回の題材も授業の流れは、結果において表のようになった。授業の糸口を準備してくれたのは、「まちは子どものワンダーランド」(住宅総合研究財団、住教育委員会編、風土社、1998年)という本である。題材でとりあつかった、牛乳パックの家づくりやダンボールの土地や街探検などはこの本の事例や丁寧なイラストでの作品の作り方等々を大いに活用、参照している。

 
日時
時間数
大テーマ
授業の小テーマ
活動内容
1
12/1
2
記憶としての家 「私にとっての住宅って?」 一枚の紙を使って自分の思う住宅を作る(描かない方法で5分で行う)
2
12/17
3
「お菓子の家を作ろう」 クッキーでお菓子の家を作ってお菓子の家をアピールする
3
1/13
2
夢の家と
地域の夢
「住みたい家を作ろう」
〜その1.こんな部屋に住みたいな〜
住むためのステキな部屋を描く
4
1/20
2
「住みたい家を作ろう」
〜その2.こんな家に住みたいな〜
住むためにステキな家 (欲しい設備、外観を含めて)を作る
5
1/25
1
「住みたい家のエネルギーってどのくらい?」 豆電球1個分の明かりをゼネコン(手回し発電機)でつける体験で得られたイメージを基本にして住みたい家のエネルギーを体感する。
1
「集まって住まう」
〜その1.家の配置を考える〜
自分の好きな場所に個々勝手に集まって住むときに生じる住問題(日照→エネルギー→生活様式変化→などなど)
6
2/3
2
「集まって住まう」
〜その2.まちづくりを考える〜
集まって住むことで生じる住問題を解決し行動する社会の知恵を区の「まちづくり公社」の方の話に学ぶ(街の防災、防犯、景観、緑などなど)
7
2/17
2
「こんな上鷺のまちにしたいな」
〜その1・上鷺宮探検〜
上鷺のここは残したいスポット撮影や地域インタビューで歴史を探る
8
2/24
2
「こんな上鷺のまちにしたいな」
〜その2・上鷺宮地域協議会へ提案〜
自分たちの提案を基にまちづくりを地域協議会の方と意見交流する
   (追)3月にはいって、撮影した残しておきたい地域のスポット写真を「手縫いによる小物づくり」とむすびつけて、地域の夢を作品化して飾った