「まちなみ住宅」100選も2回目の今回は応募総数も349点と前年度に比べ78点増え、このコンペへの関心が浸透してきたことがわかる。応募者は九州から北海道まで広域に渡った。前回同様その内訳は住宅関連事業者や設計事務所が大半であり、全国的に住宅やエクステリアに携さわっている人たちのまちなみへの関心の高さが伺えた。内容もバラエティ−に富みプレゼンテ−ションの技術も高く、前回に増して充実して来ている。
 今回は住宅系が221点と64%を占めた。その中でも前回同様一般戸建て住宅の応募が多数あったが、現在一番問題を抱える既成市街地に建つ小住宅は40点、身近にまちなみを改善するリノベ-ションは13点と、それぞれ前回に比べ増えてはいるものの全体的にはまだ少い。また集合住宅や開発型住宅は全体数はそこそこあったが、特に既成住宅地に建ち周辺の一戸建て住宅と調和した小規模のものが少なく、この分野での応募が待たれる。
 今回の応募作品の特徴として、単に建物や外構の提案や伝統的まちなみへの調和といったものだけではなく、まちなみに物語性を与え、時間をかけて育くんできた様子や、今後に展開できる身近な手法が伺えるものが多かったことが挙げられる。特にエクステリア部門には物語性があり興味ある作品が多かった。また建て替えや増改築、リノベ−ションの事例には配置や外観を工夫し、以前の状態や周辺との関係、今後の展開を考慮した提案が幾つもあり目を引いた。反対に集合住宅や開発型には建築や外構のデザインとしての精度の高さはあるものの、こうした視点が不十分な傾向があり、いま少しの工夫を望みたい。
 今回の入賞者のなかには既になんらかの賞を受賞された作品もいくつかあり、全体のレベルの向上には役立ったと思われる。またまちなみへの多様な視点が示され、審査委員も大変興味をもつことができた。来年で3回を迎える「まちなみ住宅」100選であるが、さらなる応募を期待したい。

住宅月間中央イベント「まちなみ住宅」100選審査委員会
委員長  陣内 秀信
作品展示をご希望の方へ
 イベント等で本受賞作品展示のため作品貸し出しをご希望の公共団体、NPO 等の方がおられましたら、相談にのりますので、ご一報ください。
住宅月間中央イベント「まちなみ住宅」100選 事務局
03-3592-6441
国土交通大臣賞※1
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応募部門: エクステリア
受賞者名: 中村芳子
作品名: 都会の狭い土地で緑を楽しむ
寸評
長年手入れしたプミラの這った入り口は白い壁に映え、道ゆく人に潤いを与え、住み手の心意気を感じる。
(社)日本建築士会連合会 会長賞※2
応募部門: 住宅


受賞者名: 遊空間設計室 高野保光
作品名: まちなみに参加する旗竿地の住まい


寸評
敷地延長部分を巧みに演出。奥にあるエントランスは見過ごされがちになるが、シャ−プなデザインが印象を強く与え、狭小間口の住宅ファサ−ドに示唆するものがある。
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(社)日本建築士事務所協会連合会 会長賞※2
応募部門: 住宅


受賞者名: 守山登建築研究所 守山 登
作品名: 味の店いせや(藤井邸)


寸評
店としての洋風町屋にボ−ルトの居住部分。外壁のモルタル洗い出しやスチ−ルサッシなど細部にこだわる。大正浪漫夢通りのまちなみに調和しながら存在感を示している。
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(財)ベターリビング 理事長賞※2
応募部門: エクステリア


受賞者名: 鈴木善之、群芳園
作品名: 2×4フェンス-構成1、及び構成2


寸評
ツ−バイフォ−材を利用したシステム木柵である。よくある塀の建て替えであるが故に周辺に展開する可能性があり、個々からまちなみよ良くする趣旨に合っている。
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(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞※2
応募部門: 住宅


受賞者名: シーズ・アーキスタディオ建築設計室 白崎泰弘、白崎治代
作品名: HT-House


寸評
黒のガリバリュウム鋼板の垂直の外壁が都市的雰囲気をだし、原型を残しながら増築部分でまちの顔を演出している。
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住宅月間中央イベント実行委員会 委員長賞※2   5件
応募部門: 住宅


受賞者名: 長谷川設計事務所 長谷川総一
作品名: 安らぎを与える板貼りの家


寸評
米杉下見板張りとベ−ジュに塗られた塗り壁の外壁、アプロ−チを覆う木製ル−バ−と列柱、それに横格子の塀等、柔らかい素材が中央のヤマボウシと相まって柔らかいヒュ-マンな空間をつくりあげている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 志柿敦啓建築設計事務所
 志柿敦啓
作品名: WORM HOUSE PROJECT (前田邸)


寸評
郊外でありながら都市住宅的手法を取り入れたこの住まいが3棟に展開した時、ひとつのまちなみとして周辺へインパクトを与えるだろう。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 村瀬充アトリエ 代表 村瀬 充
作品名: 「公園前のガレージハウス」


寸評
市街地住宅の重要テ−マである車庫を建物の配置を含め巧にデザインした好例である。車庫を「まちのギャラリ−」とするなど積極的にまちなみに参加しようとする姿勢が好ましい。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 設計局チョリス
作品名: コクベンチのある玄関先


寸評
季節や時間とともにメッセ−ジを送る居住者。わずかな前庭は豊かな生活空間に変わる。レトロな住宅とともに道行く人を楽しませる。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 積水ハウス(株)
京都シャーウッド住宅営業所 / 一級建築士事務所
野田 剛
作品名: 毘沙門堂へ続く道


寸評
恵まれた立地の中、自然と参道沿いの家並みに調和した住宅である。塀に庭木そして平屋の屋根、建物のファサ−ドを前面に出さない構成は古い邸宅街を彷彿とさせる。
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優秀賞※3   10件
応募部門: 住宅


受賞者名: 三谷通康
作品名: 歴史観と地域観を育む住まい


寸評
古い町屋を建て直し、平入り日本瓦葺の屋根、漆喰塗りの外壁、板張りの腰壁、格子戸など現代の町屋に見事に蘇らせている。セットバックした配置や軒高の統一などまちなみの配慮も忘れない。
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応募部門: 住宅


受賞者名: LANDTRACE 西田潔史
明石高専工藤研究室 工藤和美
作品名: 岡山の家−地域限定住居−


寸評
焼杉板の外壁が周辺の古い集落に溶け込んで美しい景観を与える。コ−トを挟んだ住宅配置ややや閉鎖的なつくりは市街地の都市型住宅にも応用できそうである。
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応募部門: 住宅


受賞者名: (有)U設計室 落合雄二
作品名: まちに潤いを与える2世帯住宅


寸評
外に向かって開いた庭は自然石と植栽で構成され、塗り壁と板張りの柔らかいつくりと季節の花が道行く人の心をなごませる。
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応募部門: 住宅


受賞者名: WanderArchi 菊池規雄
風の記憶工場/LaMoca 植田 曉
作品名: TU5


寸評
将来の隣地の建て替えも想定。白い壁に開けられた周辺から形取った楽しい窓。退屈なファサ−ドが多い集合住宅に新しい手法を示している。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 積水ハウス株式会社
 名古屋マンション事業部
作品名: グランドメゾン清水ヶ岡


寸評
雁行配置、地下駐車場、豊富な植栽、主張し過ぎない端正なファサ−ドが昔ながらの邸宅街に溶け込んでいる。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 佐野 契
作品名: ロッジ栗の木


寸評
カラマツのル−バ−や下見板により以前の建物の形を残したまま、地域に合ったまちなみに蘇生。巧みなリノベ−ションである。
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応募部門: 開発型住宅


受賞者名: 積水ハウス(株) 猪田剛史
作品名: 複数棟建売計画における可能性


寸評
コ−トを囲む様々なスリットや色彩の塀(ロジア)が前庭の植栽とともに統一的手法の中に楽しさを与える。計画的小規模開発の見事な事例。
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応募部門: 開発型住宅


受賞者名: 野尻稔建築設計事務所 野尻 稔
作品名: ぐんまの家
 −折り重なる切妻屋根の町並


寸評
十能瓦の切妻屋根、土色の塗り壁、アプロ−チとベランダの縦格子、軒高の統一など地場の木材を使った一群の住宅が、落ち着いた雰囲気をだしている。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 積水ハウス(株)多摩支店 /
グリーンテクノ積和(株)東京センター
榎本恵一
作品名: 子供と生き物の遊ぶ病院


寸評
小公園のようなアプロ−チと迎え入れるような医院の建物。患者だけでなく、道行く人にとっても、潤う空間に違いない。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 梅津政之輔
作品名: 一軒の生垣整備からはじまった、緑のまちづくり
〜U邸生垣工事とその広がり〜


寸評
改築に際しブロック塀を緑豊かなオ−プンな外構へ。個々の住民がまちなみに配慮することで、密集市街地の修復型街づくりが進む良い例である。
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奨励賞※4   22件
応募部門: 住宅


受賞者名: (株)古本建築設計 代表取締役 古本竜一
作品名: 阿賀(AGA)の家


寸評
急傾斜の悪条件の中、古い街を近代的な手法で再生する。周辺の建物との違和感は否めないが、自らの眺望を獲得すると同時に周辺の眺望にも配慮するなど建物のボリュ−ムも抑えている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 河原泰建築研究室 河原 泰
作品名: 和敬静寂の家(わけいせいじゃくのいえ)


寸評
地蔵菩薩像がたまりをつくる。南側をハイライトの窓にするなど、公私の空間を分け当初より地域コミュニティを意識した配置や前庭の設えが好ましい。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 佐藤弥栄建築研究所 佐藤弥栄
作品名: 「静謐に、ただそこにあるということ」


寸評
閉鎖的になりがちな住宅配置を茶色のスパンドレルと格子の塀がやわらげ、端正なデザインがまちなみに格調を与えている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: (株)ハマノ・デザイン 浜野忠彦
作品名: 福住通の家


寸評
3階を半ヴォ−ルト屋根とし、アプロ-チを巧みに引き込んで圧迫感を和らげるなど、市街地に建つ小住宅の手法を提示している。
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応募部門: 住宅


受賞者名: マニエラ建築設計事務所 大江一夫
作品名: ALL IN ONE


寸評
思い切って前面アプロ−チを外に向かって開放。将来ともに木々が育ち、草花が彩りを与えるか楽しみである。
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応募部門: 住宅


受賞者名: セキスイハイム阪奈(株)デザイン室 滝川洋彦
作品名: 丹波黒
 −街並みにおける、新旧の交代−


寸評
地域の伝統的まちなみをそのまま取り入れるのではなく、古い住宅を表象している白、黒、銀の3色を取り入れ、現代風に巧みにまとめている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 川添デザイン事務所 川添純一郎
作品名: 若ヶ谷の家


寸評
コンクリ−トの塀を境に道路側に、アトリエやオ−プンスペ−スを配置。やや硬質な感じはするが、ヤマボウシなど緑がそれを和らげる。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 正井建築舎 正井 徹
作品名: 明かり灯る木と土の家


寸評
ベ−ジュの塗り壁と30角の格子状の杉板張りの外壁がまちなみに柔らかさと変化をあたえている。ミニ開発の個々の建て替えが進む中一つの事例をみせている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 緑川直彦、緑川淳子
作品名: 十夜河原の家


寸評
土蔵が点在する農村集落の一角に、杉板張りと漆喰調仕上げの塗り壁、端正なデザインと、隣の公民館の広場へ連続させるため開いた前庭。都会的な雰囲気さえ漂う。
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応募部門: 開発型住宅


受賞者名: パナホーム(株) 大阪支社
作品名: 自然を創り自然と街並みに溶け込む


寸評
家族で住む4軒の住宅。新興住宅地とはおもえぬ緑豊かな外構。石畳や敷地内に流れる小川や屋上緑化されている温室。あたかも植物園に建つ住宅のようである。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 竹中工務店大阪本店設計部
 宮城浄一、日野宏二
作品名: 「双棟の家」


寸評
建物に地階を設け、上階を切妻屋根二つに分けるなど、周辺と調和すると同時にデザインの精度がまちなみに格調を与えている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: LANDTRACE 西田潔史
明石高専工藤研究室 工藤和美
作品名: 御代参街道の家


寸評
古くからの街道筋の景観になじむ妻側の黒い竪羽目板。アプローチの枕木のオープンスペースも心地良い。
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応募部門: 住宅


受賞者名: マニエラ建築設計事務所 大江一夫
作品名: 長屋門のある家


寸評
焼杉板とスサ壁による長屋門が顔の見えにくい郊外住宅地のまちなみに豊かな表情を与えている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: (株)高田建築事務所
作品名: 雪国フォルクスハウス


寸評
雪国の雁木を道路に面したアプロ−チに設け、地域性を表すとともに半公共空間を提供している。どのように使われるのか楽しみである。
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応募部門: 住宅


受賞者名: (株)JWA建築・都市設計
 代表 渡辺 純
作品名: まちに開かれた前庭を
かおとしてつくり込んだ家


寸評
垂直パ−ゴラと前庭の植栽が無機的になりがちなRCの建物のファサードに表情を与え、まちなみに効果をだしている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 西田 司、保坂 猛
作品名: 人を引き込むスロープと
 視線を操作するスロープ


寸評
開放的住宅とカ−ポ−ト、招き入れるアプロ−チのスロ−プ。閉鎖的になりがちなこの種の住宅を積極的にまちなみに開こうとしている意図が見える。
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応募部門: 住宅


受賞者名: 積水ハウス(株)名古屋マンション事業部
(株)坂倉建築研究所大阪事務所
作品名: グランドメゾン白壁櫻明荘
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寸評
保存改修された長屋門、その奥に低層の寄棟の共有棟、そして一番奥に中層の住居棟と段階を追って構成された配置は保存地区での建て替えの一つの手法を示している。
応募部門: 住宅


受賞者名: 篠崎幸久
作品名: 市街地のポケットパーク


寸評
暗い印象になりやすい母屋と賃貸住宅の間を積極的に植栽や舗石により開かれた豊かな空間としている。
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応募部門: 住宅


受賞者名: タケソノ建築設計事務所
 竹園加奈子
作品名: 百年の歴史を継承する家


寸評
古い民家を見事に改修し、伝統をまちなみに残そうとする強い意志を感じる。
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応募部門: 開発型住宅


受賞者名: 柳 稔、積水ハウス(株)
作品名: 向こう三軒両隣り、緑でつなげる
 コモンシティ船橋


寸評
20年の歳月を経て手入れも行き届いた植栽は舗石やレンガタイル、枕木などの舗装材とも馴染んで、歪曲した線形とともに魅力的な景観をみせている。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 住友林業緑化(株) 吉田和宏
作品名: 静寂


寸評
古いまちなみを残そうと、新しく建て替えた住宅の前面に門、石畳、竹垣、古びた灯篭、樹木などにより構成された巧みな外構が違和感なくつくられている。
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応募部門: エクステリア


受賞者名: 谷本秀樹
作品名: 街に向かって開かれた庭


寸評
豊かな植栽が年月とともに生い茂り、段状に造られた土留めとともに、住居のプライバシ−確保と開かれた前庭を両立させ、まちなみに潤いを与えている。
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受賞者には、各々、表彰状と副賞が授与されます。

※1 国土交通大臣賞 副賞 30万円
※2 関係団体長賞 及び実行委員会長賞 副賞 5万円
※3 優秀賞 副賞 3万円
※4 奨励賞 副賞 2万円