応募部門 エクステリア
受賞者名 中村芳子
作品名 都会の狭い土地で緑を楽しむ


●まちなみ配慮のポイント
 塀、垣根、柵、門扉の一切を設けず植栽により構成することで、道路空間との一体化をはかり狭小の用地に広がりを持たせた。
 外壁と道路とのあき空間を平面的な植栽方法で構成することで、プライバシーの確保と同時に道路環境に潤いをあたえることができる。

講評
 この作品は、まさに既成市街地に建つ小住宅をいかに豊かにまちなみとして見せるかに答えた優れた作品である。
 敷地面積、建築延べ床面積ともに80m²余り木造2階の住宅であるが、建物の主張は控えめで、植栽を中心にしたエクステリアの工夫で周囲に独特の詩的な美しさ、楽しさを生んでいる。
 建物左手は、外壁の手前に木製のフレームを設け、その中に足元のサツキ、中木のカクレミノ、今は枯れてしまったシャラにジャスミンが巻きつけられており、白い壁に対して豊かな表情を作り出している。
 中央より右側の玄関廻りは目を引く。入り口の枠取りと柱を挟んで右側の壁にビッシリと貼りついたプミラは、6年の歳月をかけて夫婦で育てあげた力作である。水の入ったドッシリとしたツボは、プミラが床から這いあがっており、入り口の壁には季節の風情を形にした飾り付けがあり、小さな赤い表札も印象的で白い自転車もオブジェのように見える。植栽の緑、表札や小物の赤や茶、壁や自転車の白、色彩のコントラストが心地良い。建て替え時に移植した南西の角にある楓と、カ−ポ−トの芝も周囲に潤いを与えている。
 建物と道路との僅かな空間に塀、垣根、柵、門扉などを一切設けず植栽により構成することで、かえって全体に奥行き感が生まれ、住宅全体を大きく見せたり、白い外壁と主張のないシルバ−サッシュの窓が地となり、植栽や小物などを図として際立たせるなど計算された効果を生んでいる。
 周辺は学校に隣接する閑静な住宅街であり、隣地の生垣との緑の連続性などまちなみへの配慮も忘れない。築13年の歳月を通して周辺と絶妙の関係を生みだした、住み手のセンスと心意気が伝わる住宅である。

「まちなみ住宅」100選 審査委員会
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