講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. 長陽駅舎の貸出申請
久永:  南阿蘇鉄道には10駅あります。師匠のアドバイスもあって各駅を見て回ったところ、長陽駅に出会いました。落書きだらけの駅舎は、壁が壊れたり柱が傾いたりしていてちょっと怖い雰囲気でしたが、線路越しに広がる稲穂の景色がとても印象的でした。一目惚れというか、ここでコーヒーとケーキを出したらお客さんを喜ばすことができると思って、役場に直談判しました。最初は門前払いのような状態でしたが、そりゃそうですよね。突然、25歳くらいの青年が企画書も持たずに「駅を貸してください」と言ってきたわけですから。でも何度も出向いているうちに、総務課長が真剣に話を聞いて下さって企画書作成などの手ほどきをして下さいました。
松村:  この駅舎はいつ頃の建物になりますか?
久永:  建ったのが昭和3年で、築93年になります。現在、南阿蘇鉄道の駅舎では最も古い建物です。私が役場に掛け合っていた当時は、姉歯問題が世間の注目を集めていました。老朽化が進んでいたこともあって、長陽駅を建て替える話も出ていたそうです。でも村長さんが長陽地区の方で、この駅に思い入れがあったんですね。私の企画書が村長さんに届いてからは、トントン拍子で話が進みました。村長さんも一緒に話し合って下さって、駅舎の屋根を葺き替えたり構造を補強するなどして貸し出すことが決まりました。結局、私がどんな人間なのか分かってもらうのに半年ほど掛かったという感じです。長陽駅の貸し出しが決まった後、利用者公募が行われまして、私の案が選ばれました。他にも居酒屋利用の案と住まい利用の案があったそうですが、前面道路が通学路となっていることや近所の方々も利用できるといった観点から、私のカフェ利用が評価されたようです。




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