講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.チープコテッジ地区の居住例
西田:  私も2013年にレッチワースを訪問したので、その時に行った居住者インタビューを少し紹介したいと思います。私が見学したエリアはチープコテッジ地区の一角になりますが、当時建設された124棟のうち118棟が現存しています。
ヒューム夫妻という方が住んでいる住宅を見学したんですが、まず緑が非常に豊かですね。そもそも住戸当たりの敷地面積が広く、その大半を後庭が占めています。これが隣の後庭と連続しているため森のように感じました。

ヒューム夫妻はこの住宅を1999年に購入していますが、その時点で大規模な増築が行われていたそうです。1970年代に正面向かって右側を、1980年代には左側を増築して、外壁も黒から白く塗り替えられたようです。こうした二度の増築によって左右にバスルームやベッドルーム、キッチンスペース、後庭側にはサンルームが増築され、ダイニングやリビングも大幅に拡張されています。このような増改築は2008年のガイドライン改正により今のチープコテッジ地区ではもう行えないとのことでした。
購入時の後庭には何もなくて、そのガーデニングにずっと励んできたそうです。NGS(The National Gardens Scheme)のオープンガーデンに登録しているので、海外からも一般の人々が庭を見学に来ると言っていました。ヒューム氏のホームページも充実していて、この住宅に対する愛着が感じられます。庭だけではなく,インテリアにしてもDIYの手作り感があふれていていました。
松村:  西田先生も齊藤先生が調査したエリアと同じ所に訪れたようですね。やっぱりレッチワースと言えばまずはチープコテッジ地区に行くんですかね。
齊藤:  そうですね。でもあんなに訪れるのは日本人くらいだと言われました。「日本人ってほんとにレッチワースが大好きよね」って(笑)。確かにどこを歩いていても日本人をよく見かけます。アメリカでもドイツでも、私が調査した住宅地はレッチワースを大いに学んだと言っていましたから、他の国でも影響力は凄く大きいと思いますけど。
鈴木:  日本でのイメージは結構良いですよね。吹田にも自称レッチワース通りがあるし。
松村:  レッチワースは3万人規模の町が一つの駅の周りに広がっていますよね。しかも一つ一つの敷地が広々とした規模を持っているから、駅前から遠い住宅だとかなり不便なんじゃないですか。車で移動するとしても、高齢になったら運転が難しくなってくるでしょうし。
齊藤:  彼らは一度で大量の買い物をするので、自家用車が普通だと思います。日常生活の利便性の感覚は日本とは違うと思いますけど、詳しくは調べていません。もっとも2012年の再訪時には電動車いすの貸し出しサービスが始まっていましたから、高齢化の問題はあると思います。
鈴木:  シングルマザー専用のドミトリーやシェアハウスのようなものが出来たと聞いた覚えがあるんですが、それらは財団が企画したものですか。
齊藤:  そういった話は財団からは出てきませんでした。住民の自主的な活動かもしれませんね。



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