講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.持続可能な住環境マネジメントの条件
齊藤:  持続可能なマネジメントの条件という観点から見ると、レッチワースには備えている条件と欠けている条件があると思います。マネジメントの主体が存在して、そこが専門家を雇っている。しかも住環境の再生のための種地を持っていたりするという点は、現在のレッチワースが住宅地として評価されている原動力になっていると思います。
しかし、その一方で合意形成の仕組みに欠けているように思いました。例えば運営費用が足りなくなった場合、この財団は住民からお金を集める権限を持っていません。例えばマンション管理組合であれば、足りない費用は住民負担するというような合意形成の仕組み、そして賦課権を持っています。そうした住民主体の新たなマネジメントシステムを作っていく必要があるのではないかと思います。
<新しいマネジメントシステムが必要>
・イギリスのスタイルは、専門家集団がマネジメントする
・一方で、住民はサービスを受け取る主体となる。住民は、評価を「足で行う」
・しかし、そのスタイルで本当に街が持続可能であるか?
・持続可能なマネジメント条件
1. 合意形成のルール(決定に従う仕組み)
2. 主体
3. 専門家(性)
4. 不動産を持つ
費用(賦課権)はなく、住民間の合意形成ルール、補償のルールはない。
★住民と専門家、行政が作っていく新たな仕組みが必要ではないか?
松村:  今のシステムでは、住民自らが住環境を良くしていこうという主体的な活動は生まれにくいということでしょうか。
齊藤:  と思うんです。確かに建築コントロールや再開発などについて専門家に意見を出させる現行のシステムはよく出来ているんですが、なにぶん専門家の相手にする数が大きすぎます。住民3万人の大規模団体でありながら各地域からガバナーを選ぶようなこともありませんし、自治会といったものがない。住民はクラブ活動などには力を入れていて、実際にコミュニティは魅力的だと評価されているんです。でもそうした活動を除くと、住民がすべきことが、今ひとつ分かりにくいというか…。
鈴木:  市民活動などは住民主体でやるとしても、住宅地の運営などは専門家に任せればよいという考え方もありますよね。もし運営も住民主体になるとすると、街はどう変わる可能性があると思いますか。
齊藤:  ……難しい質問ですね。例えば管理運営主体が潰れてしまった時、住民によって代替できるシステムになっていないことは一つの問題点だと思います。



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