講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.ヘリテージ財団の役割
齊藤:  私の研究テーマは住宅地のマネジメントです。レッチワースの調査を行ったのも、実はこの住宅地を管理運営するヘリテージ財団に興味を持ったからです。財団には120名のスタッフがいて、自己資金で運営されています。この組織の元をたどると、レッチワースを開発したファースト・ガーデンシティ社に行き着きます。この会社はレッチワースを、単なる居住や仕事の場でなく、レジャーやレクリエーションの場としても計画しました。ヘリテージ財団は、そうしたファースト・ガーデンシティ社のコンセプトを継承していて、ガーデンシティ内部で価値を創出し、その利益を住民に還元することを原則として経営されています。
ヘリテージ財団は管理費用を住民から徴収していません。ですからオフィス、工業施設、店舗からの賃貸収入で人件費を賄いつつ、住民にサービスを提供しています。例えば防犯の見回り、病院、映画館、ミニバス運行、情報誌の発行、イベントの情報提供、電動車いすの貸し出しなどを行っています。
ちなみに戦後のイギリスでは、ニュータウン法に基づくニュータウン開発が行われますが、それらは公共資金によって生まれたものです。つまり政府が出資しているわけですが、レッチワースはそうしたニュータウンとは大きく違っています。レッチワースを開発したファースト・ガーデンシティ社は、いくつかの工場の経営者たちが田園都市という考え方に共鳴して融資したことから始まっています。




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