講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.住民委員会と増改築のコントロール
森田:  払い下げ後は、増築したり外構をつくり込んだりと居住者が手を加えることで、住環境が変わって行きました。すると建物、コミュニティ、GHI組織のあり方など、様々な問題が出てきました。グリーンベルトではその度に住民が委員会を作ってそうした問題に取り組んできました。例えば2002年から「アーチファクト特別委員会」というものが作られ、昔の住宅のドアなどを集めて希望者に融通しあうという活動が行われています。この活動はグリーンベルト・ミュージアムと連携しながら行われています。

少しだけグリーンベルト・ミュージアムの補足をしておきますと、これは町の50周年を記念して発足したものです。市が二戸一の住宅の一つを買い上げて、ミュージアムに改装したんです。市がコウオプの組合員になったということですね。ツアーでこのミュージアムに来る観光客もいます。

鈴木:  古いインテリアを集めれば、ミュージアムの展示にもなりそうですね。集められた古いドアなどはどこにあるのですか。
森田:  コミュニティセンターです。このように様々な方法で増改築がコントロールされているところがグリーンベルトの面白いところです。例えば、日本ではテラスハウス形式でも区分所有が多く、基本的に住民は住戸内部しか変えられません。一方、グリーンベルトでは増改築が可能なので、組合としてどこまで許容するかという取り決めが重要になります。それから、増築部分の所有の取り決めも必要です。これはなかなか難しいところですが、コウオプの場合には全体を全員で所有している建前なので、原理的には増築部分は組合所有になります。さらに、そうした部分の維持修繕も必要になってきますので、大規模修繕の際に誰がどこまで負担するのかという問題も出てきます。

グリーンベルトの場合には、払い下げ後すぐに住宅改善委員会が増改築基準を作成し、その増改築の審査委員会や増築部分の光熱費負担を検討する委員会、また増改築のノウハウを集約したり資材を共同購入したりする委員会などができました。このように作成された様々なルールは住民主体で結構な頻度で改訂されています。居住者が個別にできることと共同管理される対象の区分も特徴的です。例えば衛生機器などが共同管理の対象になっている一方で、増改築などは居住者が個別に実施可能になっていて、グリーンベルトの実態に根差しながら個人と共同の役割分担が入り混じっている点が非常に興味深いところです。



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