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森田: |
ここで集合住宅の所有形態のあり方を確認しておきたいと思います。法律上の概念として、集合住宅の所有形態には大きく分けて二種類あるとされています。一つは二元的構成と呼ばれるもので、日本の区分所有の集合住宅やアメリカのコンドミニアムが該当します。これは居住者が住戸の所有権を単独で所有し、残りの部分を共同所有という形で所有します。こうした区分所有という考え方は日本もアメリカも1960年代に導入されたもので、それ以前は一般的ではありませんでした。ですから、かつてニューヨークのマンハッタンなどにある持家型の集合住宅は、居住者全員が集合住宅全体を所有する一元的構成をとっていたわけです。グリーンベルトの「ハウジングコウオプ」という形態はこの一元的構成の一つです。つまり居住者が組合をつくり、その組合が不動産を一体的に所有して、居住者はその住戸の使用権を得ています。
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松村: |
例えばシカゴの「レイク・ショア・ドライブ・アパートメント」はどの形態に分類されますか。
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森田: |
ミース・ファン・デル・ローエのレイク・ショア・ドライブは4棟で構成されています。もともとは賃貸の集合住宅でしたが、オーナーが手放して、2棟はハウジングコウオプ、残り2棟はコンドミニアムになっています。
区分所有(コンドミニアム)が現れるまでは組合所有(ハウジングコウオプ)が主流でしたが、この二つには類似点と相違点があります。例えばGHIの理事会では住民の代表者が住宅地の維持管理について協議していきますが、そのようなスタイルは区分所有も組合所有も変わりません。また、どちらも一般の不動産会社を通じて売りに出されます。市場原理で住宅が流通していくところは同じです。
大きな相違点としては、まず住宅を売るときに組合の承認が必要な点です。グリーンベルトではそうした手続きを「GHI Approval Process」と呼んでいます。また個人の経済状況に非常に敏感ということも挙げられます。つまり、住宅の購入ローンを組合が不可分として分担する必要があるため、個人が債務を払えなくなると共同でその連帯責任を負うことになります。従って、なるべく低所得者世帯は排除するというインセンティブが組合には働きます。
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松村: |
組合所有の場合は、組合員=住民でなくてはならないのですか。もし組合所有でも、住み手と組合員が違っても構わないなら不動産証券化と同じことになりますよね。
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森田: |
少なくともグリーンベルトでは組合員は住民であることが要件になっていて、投資目的で不動産を購入することは原則禁止されています。
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