講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.韓国留学時代のアトリエ・シェア
中村:  韓国には3年間留学しましたが、国費留学生だったので日本語講師のアルバイトを少しすれば結構贅沢に暮せました。3階建ての建物の1階を借りて最初のアトリエを作りました。車が4〜5台は並ぶ幅があって、奥行きが7mくらいあったのかな。ここを韓国のアーティストと借りてシェアしましたが、やはりたまり場になっていきました。オンドル部屋がついていたんですね。
鈴木:  制作はそこでされていたんですか。
中村:  そうです。例えば、そのアトリエではタバコを吸っている間に何が考えられるかという試みをしたことがあります。真っ白な床面を5〜6mの長さで真っ青に塗ってしまって、灰皿に見立てて灰を置いていく。タバコを吸っただけ灰が並んでいきますが、その過程で思考したことをメモしていく。これは発表していませんが、生活の中での制作の姿勢なり思考なりを自分なりに消化していきたかったんですね。
鈴木:  習作のようなものですか。
中村:  そうですね。留学先の大学のアトリエが狭くて制作の場にならなったので、その他にも金浦空港の近くに大きな牛小屋を借りたりしました。コチョンという村でしたが、まだ反日感情が強かったので日本人が来たと話題になって、最初は材料を仕入れるだけでも色々と言われました。当時は髪の毛を伸ばしてわざと侍のようにしていたせいもあったと思いますが。

余談ですが、この大家は、牛小屋を別の人に二重貸しして僕の保証金200万円を持って逃げちゃった。賃貸借の仕組みがチョンセと呼ぶ契約で、保証金を一括払いしてその利子が家賃になるという方式だったんです。その頃には仲が良くなっていたコチョン村の人から教えてもらった情報で逃げた大家を捕まえることができて、結果として事なきを得ました。



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