講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8.以前お住まいだった町家について
松村:  建て替える前の町家は、築何年くらいだったのですか。
丸橋:  160年と聞いています。江戸時代からですね。その後、昭和30年くらいに新建材が出てきたとときに、一部を改装しました。床を落としたりして。でも、白アリが出たりして、駆除の仕方が難しくて大変でした。
松村:  私の叔母も築100年くらいの京都の町家に住んでいます。代も2代くらい変わったし、地震も怖いし、台所は土間にあるしで、建て替えようかと言いながらも、何とか持ちこたえたいと言っています。
丸橋:  この辺りの年代の建物には良い材料が使われていますね。うちの大黒柱も大きかった。京都には大きな地震はありませんでしたが、強い地震にも耐えられるのではないかと思います。よく出来ているんじゃないでしょうか。

ただ、空調を始めてからは大変でした。もともとは、練炭の掘りごたつや火鉢だったのですが、電気ストーブ、エアコンと導入するうちに、隙間が出来たり、建具がはまりにくくなったりしました。

台所は寒かったので練炭を入れた火鉢が置かれていました。それでも炊事をする人は寒かったと思います。
鈴木:  床は張っていましたか。
丸橋:  張っていませんでした。水道設備も導入するのが遅かったので、井戸で汲まなければならなくて大変でした。
松村:  今でも井戸が残っている家はこの辺りにありますか。
丸橋:  数えるほどありませんね。
鈴木:  以前のお住まいには、女中さんがたくさん住んでいらっしゃったのですか。
丸橋:  戦前は家族以外に3〜4人、戦後には2人程度が一緒に住んでいたと思います。もっとも、それも私が小さいときの話で、高校生くらいの時にいなくなったと思います。
松村:  建て替えたきっかけは何ですか?
丸橋:  古くなって家が痛んできたためです。メンテナンスにお金がかかるようになってきて、特に暖房設備を入れてからは、建具などがはまらなくなってしまいました。また、シロアリが出たり、屋根がぼろぼろになったりして。最終的なきっかけとなったのは、土蔵の庇の土が全部落ちたことです。



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