(2) 八王子市めじろ台団地での取組み
1) 団地の概要
- 八王子市のめじろ台団地は1967年、55年以上前に第1期分譲の予約販売が開始された、人口約8千人の大規模戸建住宅団地です。もともと山だったところを民間企業が買い上げて開発・分譲するという、この時代に日本各地で行われていたことが、めじろ台団地でも進められました。
- 住民の年齢層を見ますと、2000年には最初に住み始めた第1次世代の子ども(第2世代)がまだ団地内に残っておられましたが、2005年から2015年には第2世代が団地の外に移られ、65歳以上の単身もしくは夫婦のみ世帯が30代に建てた家にずっとお住いになっているという、やはり全国の団地で見られる状況が起きています。そして現在は65歳以上人口は4割を超えています。
2) めじろ台地区まちづくり協議会
- 2017年に東京都からお招きいただき、住宅団地でのまちづくりをどのように進めるべきかという講演を行った時、めじろ台団地の方々が、やはり住宅団地でのまちづくりについて登壇されており、私の話をお聞きになっておられました。後で団地の町内会役員の方々が大学までいらして、私にぜひ我々のまちづくりを応援していただきたいというお誘いをいただき、私共とめじろ台団地との協働がスタートしました。
- 2018年3月にめじろ台で講演会を開催しました。講演会に集まられた方々に、皆でまちづくりについて語り合う場をつくりましょうとお話したところ、「めじろ台地区まちづくり協議会」がつくられることになりました。
- 2019年4月にまちづくり協議会がスタートして、毎月1回協議会を行っています。最初はまちのいいところ、悪いところや、こんな風になりたいねといった意見を出し合いました。住民の方々との議論を通して、住民の悩みや課題がどこにあるのかが浮き彫りになってきました。そして、この方が感じている課題とこの方が感じている課題がどう異なるか、あるいは一見違う悩みでも、全体的な枠組みで見ると同じ手法で解けるのではないかといったことを住民と議論していくことができました。
3) ワークショップなどでの議論
- このまちは高齢化が進み、65歳以上人口が4割を超えていますが、これが5割を超えると限界集落と呼ばれる、引き返すことのできなくなる状況になると言われています。そうなる前に手を打っておこうということで、現在のお住いの方々が外で活躍できるようなまちづくりや、子どもが一旦はまちを出て行ったものの、やはり生まれ育ったまちがいいなと戻ってくるようなまちづくりを進めようということになりました。色々な団地を調べてみますと、外へ出て行った、団地で生まれ育った人の、2〜3割が団地にリターンするという現象が起きるところがあります。自分の息子・娘がリターンしたくなるまち、子育てや孫育てのやりやすいまちはどうやったらつくられるのだろうか、あるいは学生が集まるような楽しいまちを目指そうといった意見が、最初のワークショップで集まりました。さらに、私の研究室や専門家がアンケート実施と分析を行いました。
- そうした取組で出てきた意見をまとめますと、交流が大切、まちの印象をもっとよくしよう、日常生活の安心、多世代が住めるまちづくり、居場所づくりといった、概ね5つの意見に分かれることが分かりました。
- 2020年からコロナの影響で、まちの人生の先輩方が集まることが難しくなりました。しかしZOOMの使い方を我々がお伝えすると、ご高齢の方々が自分達でZOOMを使った会を設けるようになりました。