令和5年度

 高齢者等住まい関連施策並びに会員各社への期待!

国土交通省住宅局安心居住推進課 課長 上森康幹

(一社) 住宅生産団体連合会「成熟社会居住委員会」令和5年度第1回委員会 (令和5年5月16日) では、国土交通省住宅局安心居住推進課の上森課長から、高齢者の住まいのニーズと国交省の取組みの最新情報についてお話を伺いました。特に「高齢者の住宅資産の循環活用に関する検討調査」から、高齢者の住み替え先について、ハードのスペックだけではなく、生活環境や見守りなどのサービスが重視されていることを伺いました。

(1) 高齢者を取り巻く現状

1) 住まいのニーズ

 我が国の総世帯数は減少局面となっていますが、高齢者単身世帯・夫婦世帯は増加し、2030年には合わせて約1,500万世帯となる見通しです。さらに高齢化の進展に伴い、要介護・要支援や認知症の高齢者数が増加しており、今後も増加する見込みです。また、高齢の困窮世帯の増加も予測されています。
 高齢者のいる世帯の8割は持ち家に住んでいます。そして内閣府「平成27年版高齢者白書」では介護を受けたい場所について自宅のニーズが最も高いことが示されていますが、国土交通行政モニターアンケートによると、「終活期」に住みたいところとしては、「その時に住んでいる家」の割合が最も高く約7割を占めています。
 しかし実際には、病院で亡くなられる方が増え続けており、現在、死亡者の7割以上を占めています。自宅で亡くなられる方は減少しています。病院での対応にも限界があり、今後は在宅での看取りが課題と考えられます。
 国土交通行政モニターアンケートによりますと、高齢期に「できれば住み替えたい人」は約3割です。住み替えたい理由としては、「高齢者に適した大きすぎない住宅に住み替えたい」、「買物、医療等の利便性を向上させたい」といった生活環境の良いところに住み替えたいとの理由が最も多くなっています。バリアフリーや耐熱性といった個々の住宅の性能を理由とする割合は比較的低くなっています。
 「平成29年度国土交通白書」では、今後求められる住まい方として、全世代において、介護が必要になっても安心して暮らし続けられる住まいを求めているとの結果が出ています。さらに高齢者は、同居・近居、他世代交流、シェアハウスなど、つながりのある住まいを求めているとの結果が出ています。

2) 住まいを自己決定できる仕組み

 地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制です。介護保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じてつくり上げていくことが必要です。
 地域包括ケアは、要介護になっても、できるだけ自宅で暮らし続けるか、あるいは地域の高齢者向け住まい・施設へ転居するかを自己決定できる仕組みです。自宅で暮らし続けるには、自宅のバリアフリー化や、新築・建て替え時に、将来介護サービスを受けることに配慮したプランニング・しつらえが必要となります。地域の高齢者向け住まい・施設への転居には、近所づきあいや商店街などの馴染みの関係の継続や、十分な情報収集・検討による選択が必要となります。

3) 新たな「住生活基本計画」(計画期間:令和3年度〜令和12年度)

 令和3年3月に閣議決定された新たな「住生活基本計画」では、「8つの目標」を設定していますが、この中で高齢者に関しては「目標4 多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり」と「目標5 住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」の2つを位置づけています。