トップページ 「まちと住まい」の実践事例 題材:「家って何?」 ≫ 授業実践例



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1〜3グループはアンケート結果から問題点やわかったことを話し合う。4〜6グループは中村家住宅見学で見つけた工夫や感想を分析し、話し合う。図2のように、チェンジグループになり、違うグループのメンバーに、各グループでわかったことを伝え、意見交換する。
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ゲストの中村さんの話を聞く。「いつも心がけているのはメンテナンス、掃除と修理である。」「建物は人がいないとダメになる。」「いつも人がいて空気が流れているから換気につながる。」「家とは安らぎの場」。ゲストの話を参考にし、自分達の生活について考える。
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自分の生活を振り返り、どう生活に工夫していくか考え、感想を書き残す。

【グループ内での話し合い】

子:
アンケートでわかったことは、「掃除をしている時、気をつけていることは?」という質問では取りやすいように整頓しているが一番多かった。マンホールの「家」を知らないという回答に驚いた。マンホールの「家」を考えると、自分達はぜいたく。「家」は生活する所という答えが七十五パーセント。中村家見学の感想を調べてみたら、工夫していると答えた人が三十五パーセントいたので、中村家には、工夫がたくさんあるんだなあと思った。
T2:
どんな工夫があったの?
子:
煙を出す所(換気)などがあった。中村家見学の感想文分析で少数意見があった。中で、「中村家の中村さんにとって『家』は安らぎの場所と言っていたけどなんで安らぎなのかなあ。」というものがあったので驚いた。
写真1 アンケートの分類結果から何がわかるか考える
写真2 中村家の方から柱の説明を聞く・本時前

【全体】

T1:
気付いたこと・わかったことをどうぞ。
子:
アンケート分析から、掃除の時、目に見える場所しか掃除してないということがわかった。
T1:

そういえば、中村家住宅見学の時も、みなさんは、誰も気付きそうにない所に注目していましたね。
 みなさんが注目した柱のある所は「雨端(あまはし)」といいます。空気の流れもあるし、日よけにもなる雨よけにもなる。見える所だけの掃除に気付いたみなさん、するどい。
 それではここで、カナダの家を紹介します。この(カナダ)家を作ったK1さん、奥さんのK2さんといいます。How are you today?

写真3 中村家の雨端(あまはし)
 写真4 カナダ風の家

【全体・カナダの家紹介】

T1:

写真を見ながら質問をどうぞ。(英語で答える。K2さんが通訳。)

子:
なぜカナダの家を作ろうと思ったのですか?
K1:

知識として作り方を知っていた事と、カナダの住まいが家族にいいと思ったからです。

T1:
これは何でしょうか。(室内写真提示。)
子:
ブーメラン?
T1:
K1さん、これは、ブーメランですか。
K1:
いいえ、天井扇風機です。夏場は涼しく、冬場は暖かくしてくれます。時計回りだと空気が上に上がるので冬は暖かいです。夏は反対回りにし、風を下に送るので涼しいです。
T1:
K1さんが持ってきた資料を見ましょう。室内の空気の回り方です。(実物投影機で資料提示。)
T1:
K1さんは、家のために何をしていますか。
K1:
メンテナンス(掃除や修理)。維持させるためです。
T1:
あなたにとって「家」はどんな意味がありますか。
K1:
ここちよい場所・安全な場所です。
T1:
K1さんの言葉を聞くと、マンホールの「家」が気になるね。中村家見学の時に聞いた大事な言葉も「掃除は大切」「人がいないと家は壊れる」でした。人が空気の流れを作るから、人がいるということは大事なんですよね。K2さん。
K2:
そうです。中村家は人がたくさん(ずっと)いたから維持していたと思います。
写真5 空気の流れをつくる扇風機
 写真6 窓

子:

 前までは「家」がある事は普通だと思っていたけど、今ではマンホールチルドレンの子ども達の事を考えると「家」があることは、ぜいたくだと感じた。見えない所は掃除をしていないので、これからやる。掃除をいろんな見方でやる。
  前まで、家についてあまり考えたことがなかったけど、家について考えて、いろんなことがわかったのでよかった。


< 台所の火の神と換気 >
 < 台所の換気 >
< 屋根の換気 >
 < 豚小屋・残り物はこちら・ゴミなし >


 アンケートの分析結果から、掃除しているようで実はやってないということに気付いた子ども達がいる。そして、「家」の存在に改めてありがたさを感じた子もいる。今まで、身近な「家」を考えたことがなかったことに気付き、考え合うことのよさを認めた子ども達がいた。それは、「人」がどう生きるべきか、どう生活するべきかを考えることに繋がったのではなかろうか。そして、生活への工夫を自分なりに絞り込んでいたのではなかろうか。


  地域素材の中村家住宅は、どんな学習ができるだろうか。家庭科を中心に、社会・国語・算数・総合的な学習との繋がりを図3のようにした。その繋がりを明らかにすることは、「家」について考える子どもの思考を助け、意欲を高めるてだて発見に繋がったと捉えている。「家」を深める本時の授業の工夫だけでなく、題材を見通し、他教科の持つよさを生かし、子ども達の思考に添うデザイン化は重要であろう。つまり、思考を深めるための基本的な知識と、「人」とのかかわりを見る視点を持たせるてだてを明らかにするデザインを持つことである。このようなデザインのもと、「家」と「人」とのかかわりを考えた家庭科は、単に家族の中の自分の役割を知るに留まるのではなく、自分とのかかわりや意味を考え深め、自分の生活環境の発見工夫へと繋がっていくと捉えている。

図3 <基礎的な知識と、人とのかかわりをデザイン>