20世紀の不都合な真実と、その打開策
- 住宅ローン債務のくびきからの解放
(4) JTI (移住・住みかえ支援機構) の制度を利用したいくつかの解決方法
- 都市計画の専門家は日本の都市のスポンジ化を指摘していますが、日本の空き家問題が大きな関心を集めています。このまま放置すれば、ますますスポンジ化するでしょう。
- 全部の住宅や住宅地を救うことは難しいでしょうが、住宅を次世代に継承していくためのしかけとして、住宅ローン返済負荷や資産デフレといった問題に対処する新しい金融の仕組みづくりに、一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)は取り組んでいます。園田はその機構の理事を務めています。
1)シニア向け:資産の流動化と、住宅運用の選択肢の見える化
[1] 持家借上げ制度 (賃貸型リバースモーゲージ制度)
- 50歳以上のシニアの持家を、終身または一定期間で借り上げ、子育て世帯等に3年間の定期借家として転貸する制度です。借上げる住宅は、劣化診断をして、不具合があれば改修し、耐震性は現行基準の0.7以上とします。
- 発足以降これまで11年間行ってきた結果、2016年9現在の借上げ実績は、延べ1,107件、現有効数は764件です。
[2]「かせるストック (定額型)」の事前交付 (住宅ねんきん定期便)
- 団地等の一定地域に所在する既存住宅が対象です。シニアが持家借上げ制度を利用する場合の最低家賃を、証明書発行で明示するものです。自分が現在持っている居住用不動産価値が将来どれくらいになるかが分かるようになるので、将来の空き家化を未然に防止し、シニアの資産活用を促進し、ひいては、若年子育て層の呼びこみによる世代循環を創出します。
- 子育て世帯に転貸する場合は、後に述べますがDIY長期リースに限定します。
- 借上げる住宅の条件は、[1] 改修後の耐震性能が現行基準値以上であること、[2] 5年ごとに定期診断し、補修が必要となった箇所を補修すること、の2つです。
- 今年度、パイロッ卜事業を実施しています。
2) シニア向け:過重債務からの解放
[1]「残価設定型住宅ローン」への借り換え促進
- 40歳代から50台代の現役の住宅ローン返済者に対して、既存の住宅ローンを可能な限り長期化した「残価設定型住宅ローン」に借り換えを促すことにより、退職後の返済負担に対する不安を解消し、将来の住み替えをしやすくします。
- 残価設定型ローンとは、JTIが保証する定額家賃の範囲内で返済できる長期ローン (例えばフラット50) と、定年退職までに完済する中長期ローン (例えばフラット20) の2ローンを組み合わせたローンです。
- 常陽銀行と取手市と提携して実施中です。東京の都市銀行などで借りたローンを、常陽銀行で借り換えるローンを提供し、退職後の取手市への住み替えを促進しています。
3) ヤングファミリー向け:ノンリコースローンの提供
[1] DIY長期リース型リノベーション住宅
- JTIが提供する一定の質を満たした住宅を借用し (長期リース)、自分の資金で自由にリノベーションし、居住する仕組みです。スケルトンで借りていただき、DIYでカスタマイズするという考え方です。自己資金分については、低利のローンを利用し、居住期間内に返済を完了します。
- 住宅事業者は、長期リースの住宅の管理費収入と大規模リフォーム (カスタマイズ) 工事の受注が期待できます。
- 今の若い人の価値観では、自分の家を持たないといけないと考えている人はあまりいないようです。そうしたヤングファミリーが、子育て期間等の必要な期間において、低額な費用で、良質かつ個人の好みを反映した住宅に居住できるものです。
[2] 移住・住替え支援適合住宅「かせるストック証明書」の発行
- 転勤などで当該住宅に居住しなくなった場合、またはローンの返済ができなくなった場合に、JTIが借り上げてくれることを約定した証明書を発行し、住宅の資産性を保証します。
- 17社・団体が参加しており、既発行数4.8万件です。
[3] ヤングファミー向け「かせるストック (定額型)」
- JTIの査定に基づき、建物の引き渡し時から50年間、定額の「借上げ最低保証家賃」を設定します。証明書を発行し、住宅の収益還元価値 (資産性) を保障します。これまでの「かせるストック」と異なり、最初の入居者が決まらなくても、6ヶ月後より「借上げ最低保証家賃」が支払われます。
- 査定金額は3〜7万円で、現時点では個別に査定していますが、全国の郵便番号別の査定データをデータベース化済みです。
- 今年度からパイロット事業としてはじめました。大和ハウス、住友林業、ミサワホームの3社が導入。330件を発行しています。
[4] 買取再販型リノベーション住宅
- 既存住宅を買取再販で購入する場合に、一定の条件を満たした住宅に対して貸せるストック (定額型) の証明書を発行します。一定条件とは、改修後の耐震性能が現行基準値以上であることと、5年ごとに定期診断の上、補修必要箇所を補修することです。
- 新築よりも安い価格で準新築を安心して購入できます。