プロデューサーから一言:西田 徹(〜2015年度)


武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科専任講師


私はライフスタイルの専門家ではないが、都市における人の生活行動を描いて、分析するという研究をしているので、その視点からなら少しは語ることができるかも知れない。その前に、少し整理しておきたいことがある。私たちが日常一般に使っている「環境」という言葉の定義であるが、生活環境とか都市環境、自然環境といった風に使っている「環境」であるが、これをちゃんと整理しておく必要があると思う。

人間・環境系の研究では、まず第一に「人間と環境とは一体である」という主張がある。これは、環境は人間の行動を規定するものではなく、もちろん人間が環境を規定するのでもなく、人間の環境に対する働きかけとその相互作用によって、人間も環境も一緒に変化していくものである、という主張である。私たちは人間なので、ついつい環境の中から人間を特別な特別な存在として分けて考えてしまう。しかし、神様から見れば、人間も環境の一部に見えるのではないだろうか。そして、人間も環境も静止することなく、いつも絶えず変化しているものである。

具体的な例で言えば、ある間取りの家に住むと、子どもが不良になりやすいとか、夫婦の仲が悪くなるとは言えない。そもそも個人は一人ひとり違うので、そのままでも問題がないこともあるだろうし、疑問を感じれば、住み心地がよくなるようにインテリアや間取りを変えればよい。人間と家は一体なのである。家という環境は住み手の働きかけによってどんどん変わっていくものであるし、また、住み手の自由な意志で変えていけるものでなければならないとも言える。

今回のテーマであるライフスタイルも、人によって違うことはもちろん、住む地域によっても違うし、個人のなかでもどんどん変化していくものである。例えば、独身時代と子育て時代などのライフサイクルでも大きく違ってくるし、それよりも社会の変化の方がもっと大きいかも知れない。私たちは刻一刻と激しく変化する環境の中で自分に合ったライフスタイルを組み立てていく必要がある。もしも、その組み立て方に失敗すると、私たちは呆然と立ちつくすことになる。私は、そうなる前に自分と「まち」との関係をしっかり組み立てておかなければならないと思っている。そういう訳で、私の研究は家の中よりも「まち」の中での個人の生活の組み立てをメインに扱っている。隣近所はもちろん、公園や図書館などの公共施設、道、川、商店など個人と物的なものとの関係やそこ出会う人との関係などを調べている。家の中ほど個人の環境に対する働きかけがすぐに結果としてあらわれる訳ではない。しかし、大きく捉えると個人の働きかけの総和が「まち」を創っていると言えるであろう。

私の中では、多様性をもった「まち」というのが一つの理想である。それは、個人がまちに対して様々な働きかけが出来て、まちと様々な関係を組み立てられる環境を指しており、まちに多様性があるだけでは十分ではない。今はまだうまく表現できないが、それは似ているようで少し違う。一つ言えることは、個人がまちに働きかけることによって新しい多様性(価値)が生まれるのであって、はじめから存在しているものだけではないと思う。今回は個人のライフスタイルから「まち」の多様性を見て行ければいいと思う。


  松村 秀一 鈴木 毅


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