講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6. 失敗を許容する「ゆるさ」を持つ
松村:  今後はどのような事業展開を考えていますか?
荒:  まだまだネイバーフッドデザインは特殊なので、一般化していきたいという気持ちがあります。これまでは住宅地のエリアマネジメントの象徴となるような組織やコミュニティスペースを作ってきましたが、ちょっとしたマンション共用部でもできることはたくさんあると思います。それから普及という点では、研修事業なども手掛けていきたいと考えています。こうした取り組みから深いネイバーフッドデザインが生まれるかどうか分かりませんが、次の役割は当たり前にしていくことを考えています。
鈴木:  確実に需要はありますよね。エリアマネジメントを求める再開発などが増える一方で、何をしたらいいのか分からないという人もたくさんいるようですから。
荒:  住民側にもニーズは増えています。都市部では、ベタベタな関係性ではなく多少知り合いがいるような暮らしを求める声が目立ち始めています。しかし、それに応えるビジネスモデルが確立していないのが現状だと思います。
松村:  確かにマンションの空き家問題では重要な視点になるでしょうね。戸建住宅とは別のシビアな問題がマンションにはあります。空き家を抱えたマンションに若い人に入って欲しいと考えても、他のマンションと違う何かを明確に示せないとうまくいかない。それこそ、みんなでカレーを作るといった活動が価値を持ち始めていたりします。
鈴木:  著書では「半歩」という表現を使って説明されていた点ですね。
荒:  もう一つ、今後の展開として考えていることがあります。ネイバーフッドデザインの派生形として、自分たちでお金を集めて地域に関わっていけないかと思っています。まちとの関わりが深くなって住民の方々と仲良くなると、ネイバーフッドデザインの対象としているエリアの外からも手伝って欲しいという依頼が来るようになりました。例えばひばりが丘団地の北側には、自由学園が宅地分譲した学園町という住宅地があります。敷地250坪ほどの邸宅が並ぶエリアですが、こうした住環境でも空き家や街並みが継承されない宅地開発が増えている。どうにかしたいと相談を頂いてもソリューションを示せなくて、非常に歯痒く感じてきました。不動産取引や小規模開発ができる人材雇用や企業との連携のもと、事業収支を含めたビジネスプロデュースができるようになればと考えています。



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